増殖因子「Wnt」が多くの胃がんの細胞増殖をコントロール
慶応義塾大学は8月17日、36例のヒト由来胃がん細胞の効率的な体外培養・増殖に成功し、「Wnt」と呼ばれる増殖因子によって多くの胃がんの細胞増殖がコントロールされることを発見、さらに動物実験モデルを用い、Wntを標的とした治療法が胃がんに有効であることを確認したと発表した。この研究は、同大医学部内科学(消化器)教室の佐藤俊朗准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米科学誌「Cell」に掲載されている。
画像はリリースより
多くのがんは、遺伝子変異が原因である細胞増殖異常によって、致死的な病となることがわかっている。しかし、胃がんの細胞増殖異常につながる遺伝子異常については、十分に解明されていなかった。
Wntを抑制する標的治療薬が胃がんの増殖を著明に抑制
今回研究グループは、新しい培養技術によって、36人の患者の胃がん細胞を体外で培養し、胃がんの細胞増殖異常につながる遺伝子異常の調査を実施。胃の正常細胞は「Wnt」と「R-spondin」と呼ばれる2つの増殖因子が協調して細胞増殖を制御しているが、多くの胃がんはR-spondinがなくても増殖できる能力を獲得していることを発見した。
さらに、研究グループは、こうした胃がんに特徴的な遺伝子変異を特定し、それらの遺伝子変異がヒトの正常胃細胞の増殖異常につながることを実証。多くの胃がんは、その増殖にR-spondinが不要となっても、Wntは必要であることを見出した。これらの結果をもとに、ヒト由来の胃がん細胞を移植したマウスモデルを用い、Wntを抑制する標的治療薬(Wnt-C59)が胃がんの増殖を著明に抑えることを示した。
Wnt-C59のようなWntを標的とした治療薬は、すでに多くのがんへの臨床応用段階にあり、この研究成果が胃がん治療の新しい突破口となることが期待される、と研究グループは述べている。
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・慶応義塾大学 プレスリリース