大腸内視鏡検査中にポリープを検出し、組織診断を予測
東京慈恵会医科大学は8月17日、大腸内視鏡検査中にリアルタイムでポリープを検出し、その組織診断を予測することが可能な、人工知能(AI)技術を用いた検査支援システムを開発したと発表した。この研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、同大学がエルピクセル株式会社と共に実施しているもの。研究結果は、5月の第95回日本消化器内視鏡学会総会シンポジウム、6月の米国消化器病週間(DDW:Digestive Disease Week)で発表された。
画像はリリースより
今後日本では、社会の高齢化に伴い大腸がんの好発年齢層が急増することが予測されるが、内視鏡専門医の育成数を増やすことや、最先端の内視鏡システムを広く普及させるには、人的経済的負担が大きく、時間もかかる。そこで、同大学とエルピクセルは、内視鏡医の技能や機械の性能によらず検査精度の底上げと検査の効率化を図るため、従来使用されているさまざまな内視鏡システムに対応が可能な人工知能技術による大腸内視鏡検査支援システムの開発に取り組んできた。
大腸ポリープ検出精度は感度98%、陽性的中率91.2%
今回、東京慈恵会医科大学附属病院で収集した約5万枚の大腸ポリープ画像から作成した学習用データを基に、大腸ポリープを自動認識し、組織診断の予測までリアルタイムに行うことのできる人工知能支援システムを構築。開発に際しては、人工知能による物体認識性能に定評のある機械学習手法Deep learningを採用した。
2018年5月現在、同システムの大腸ポリープ検出精度は感度98%、陽性的中率91.2%。内視鏡専門医であっても発見が容易ではない平らなポリープや微小ポリープなどに限定した場合でも、検出感度93.7%、陽性的中率は96.7%となり、高い精度が確認されたという。
同研究成果より、すでに東京慈恵会医科大学附属病院の内視鏡室に同システムを設置し、現在、臨床現場での評価に基づいたさらなる改良に取り組んでいる。来年度はさらに臨床試験を拡大し、国立がん研究センターと共同で、同システムの有効性の確認を進めるという。このプロジェクトの実現により、より多くの人々に良質な大腸内視鏡検査を広く速やかに提供することで、大腸がんの早期発見・早期治療に貢献するばかりでなく、効率的に大腸がんの発生を未然に防ぐことが可能になるものと期待している、と研究グループは述べている。
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・東京慈恵会医科大学 プレスリリース