収入が「幸福感」に影響する人、しない人を比較研究
広島大学は8月9日、「マインドフルネス」傾向と呼ばれる、自分の経験を言葉にあらわすのが得意であったり、自分の経験に批判的にならない人は、年収の多い少ないに関わらず幸福感が高いことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学大学院総合科学研究科の杉浦義典准教授と杉浦知子特別研究員との研究グループによるもの。研究成果は、スイス科学誌「Frontiers in Psychology」のオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
GNPやGDPといった経済的なものにかわる豊かさの指標として、国民総幸福量という言葉が注目を集めている。経済力と幸せの関連について、影響はあまり強くないものの、「収入の多い人の方が幸福感が高い」ということが多くの研究で示されている。
今回、研究グループは、収入と幸福感の関連があまり強くないことに注目し、収入が幸福感に影響する人と、しない人(収入が多くても少なくても幸せを感じられる人)がいるのではないかという仮説を立て、調査を行った。
マインドフルネスへの取り組みが、就労者の抱える問題を解決する可能性
研究グループは、収入が幸福感に与える影響の差は、「マインドフルネス」と呼ばれる心理的な傾向の違いによるものではないかと考えた。マインドフルネスの高い人は、その瞬間に起きていることに丁寧に注意を向けている。例えば食事の時も、じっくりと歯ごたえ、味、香りを味わう。また、自分よりも収入の多い人や社会的に成功している人と比べ、引け目を感じたりすることは誰にでもあるが、そのような時でも、マインドフルネスの高い人は一時の思いに振り回されず、自分は自分、他人は他人として、どちらも大切な存在であることを認識し、平穏な気持ちを保つことができる。
今回は、20~60歳までの社会人734名に、年収、幸福感、マインドフルネスについての質問を含んだウェブ調査を行い、年収についての回答が得られた734名を対象に分析を実施。マインドフルネス傾向の高い人と低い人の違いを分析したところ、低い人では「収入の多い人の方が幸福感が高い」という従来通りの結果であったのに対し、高い人では「収入と関係なく幸福感が高い」ことが判明したという。
今回の研究では、マインドフルネスの高い人と低い人を比較しているが、マインドフルネスは自分の呼吸にゆっくりと注意を向ける、といったトレーニングで向上させることが可能だ。今回の結果は、幸福にいたる多様な道筋があることを示唆しており、ワークライフバランスや過労の問題など、働く人の多くが直面する問題へのよりよい解決の糸口につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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