2014年に国の指定難病となった自己免疫疾患
京都大学は8月9日、国の指定難病である自己免疫性膵炎の原因を解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科消化器内科の千葉勉教授(研究当時、現関西電力病院院長)、児玉裕三同講師(研究当時、現神戸大学教授)、塩川雅広同医員(研究当時、現神戸大学特別研究員)らの研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「ScienceTranslationalMedicine」にオンライン掲載された。
画像はリリースより
自己免疫性膵炎は日本で確立された新しい疾患で、血清IgG4の高値と膵臓組織へのIgG4陽性細胞浸潤、線維化などを特徴としている。また、同様のメカニズムでさまざまな臓器を同時性・異時性に侵すこともわかってきており、原因不明の難治性疾患として、2014年には国の指定難病に指定されている。
同疾患は、膵臓の炎症と線維化により糖尿病を引き起こすほか、膵がんと誤診して手術を行ってしまうなどの問題が生じている。原因として、自己抗体が誤って膵臓を攻撃していると考えられているが、膵臓の中のどの物質を攻撃しているのかは、不明だった。
抗体の測定で確定診断が可能に
研究グループは、この病気の自己抗体が何を標的として攻撃しているかを探るため、自己免疫性膵炎の患者の血液から抗体を抽出し、マウスに投与。その結果、患者の自己抗体がマウスの膵臓を攻撃することが判明。さらに、この原因物質(自己抗原)を探索したところ、自己免疫性膵炎患者がもつ自己抗体が、自身の膵臓に存在する細胞外マトリックスのタンパク質「ラミニン511」というタンパク質を誤って攻撃していることを発見したという。
今回の研究により、ラミニン511が自己免疫性膵炎の原因であることが判明したことで、今後、ラミニン511抗体の測定による自己免疫性膵炎の確定診断が可能となり、病勢の把握もできるようになると考えられる。また、さらに、病因が解明されたことで、より副作用の少ない新たな治療法の開発も期待される。
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・京都大学 研究成果