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薬用植物アシュワガンダの薬用成分の生合成に関与する遺伝子を発見-理研

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2018年08月09日 AM11:45

アーユルベーダ生薬における重要な薬用植物アシュワガンダ

理化学研究所は8月7日、インドの伝統医薬アーユルベーダ生薬における重要な薬用植物「」の薬用成分であるウィザノリド類の生合成に関与する鍵遺伝子を発見したと発表した。この研究は、理研環境資源科学研究センター統合メタボロミクス研究グループのエヴァ・クノッホ訪問研究員、斉藤和季グループディレクターらの国際共同研究グループによるもの。研究成果は「Proceedings of the National Academy of Sciences, USA」に掲載されている。


画像はリリースより

植物は、薬などに利用する多様な特異的(二次)代謝産物を生産する。これは、植物が長い進化の過程でゲノムに刻まれた遺伝的多様性として獲得してきた形質で、これらの特異的代謝産物の中でもトリテルペノイドやステロイドは、最も化学構造的に多様性に富んだ化合物群である。この構造多様性は、しばしば二重結合の有無や位置によって決められる。

ウィザノリド類は、主にナス科植物に蓄積され、約600種の化合物が含まれるステロイド系化合物群。なかでも、インド伝統のアーユルベーダ生薬であるアシュワガンダは、ウィザノリド類を主要な薬用成分として含有する最もよく知られた薬用植物だ。アシュワガンダとそれに含まれるウィザノリド類には、抗炎症作用など多くの薬効が認められ、天然からの新薬開発が期待されている。しかし、ウィザノリド類の生合成に関する遺伝子や酵素はほとんど解明されておらず、そのため合成生物学や代謝ゲノムエンジニアリングの研究は進んでいない。

ホルモン生合成に必要な遺伝子と相同性を示す「

研究グループは、ウィザノリド類を含むナス科植物のトランスクリプトームデータを詳細に解析。その結果、植物に広く存在しステロイド系ホルモン生合成に必要な遺伝子「DWRF1/」と、それに相同なジャガイモなどの毒性ステロイドアルカロイド生合成に関わる遺伝子で2014年に斉藤副センター長らが発見した「」に加え、これらの2つの遺伝子に相同な3番目の新しい遺伝子を発見し「24ISO」と命名。複数のナス科植物種において、24ISO遺伝子の存在はウィザノリド類の蓄積とよく一致していたという。

次に、24-メチレンコレステロールを生産する酵母で24ISO遺伝子を発現させたところ、24-メチルデスモステロールが生産されることを確認。また、この組換え酵母の抽出粗タンパク質を用いたin vitroの実験でも24-メチレンコレステロールから24-メチルデスモステロールへの変換(24位二重結合の異性化)が確認できたという。また、ベンサミアナタバコの葉に24ISO遺伝子を一過的に発現させたところ、対照群では見られない24-メチルデスモステロールの蓄積が確認された。

さらに、ウィザノリド類を主要な薬効成分として蓄積する薬用植物アシュワガンダにおいて24ISO遺伝子の発現を抑制したところ、生合成中間体である24-メチルデスモステロールと主要最終産物のウィザフェリンAの蓄積が著しく低下。この結果から、この遺伝子がウィザノリド類生合成に重要な役割を果たしていることが示されたとしている。

今回明らかとなった新酵素24ISOの働きで生成したステロイド側鎖の24位の二重結合は、全てのウィザノリド類を特徴づける部分構造であることから、その薬効にも関係していると考えられる。したがって、今回の発見は長年その詳細が不明だったウィザノリド類生合成のメカニズムや制御の解明に新しい道を拓くものとしている。また、アシュワガンダは、アーユルベーダ生薬として健康長寿に有効だとされ、現代的な研究からも抗炎症作用による慢性病の改善やアルツハイマー病に伴う病斑を快復する効果が報告されている。今回の研究成果について、研究グループは「ウィザノリド類の合成生物学や代謝ゲノムエンジニアリングが大きく進展すると期待できる」と述べている。

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