患者自身も気づきにくい日常生活で感覚処理特性を評価
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は8月6日、自閉症スペクトラム(ASD)児の聴覚過敏性が日常生活の身体活動動態と関連することを明らかにしたと発表した。この研究は、NCNP精神保健研究所児童・予防精神医学研究部の高橋秀俊室長ら、東京大学大学院教育学研究科身体教育コースの山本義春教授らのグループによるもの。研究成果は、国際科学雑誌「Frontiers in Psychiatry」のオンライン版に掲載された。
画像はリリースより
ASDで多く見られる非定型的な感覚処理特性は、家庭生活や学業・就労など日常生活のさまざまな場面で多大な支障をもたらす中核特性のひとつだ。しかし、周囲の人だけでなく、ASD患者自身も気づいていない場合が多く、日常生活で感覚処理特性を評価することは容易ではない。
身体活動動態はウエアラブルデバイスで計測
今回の研究では、ASDの子ども14名と定型発達(TD)の子ども13名が参加。65~105dBの強さの音に対する聴覚性瞬目反射について、眼輪筋筋電図により評価された子どもの神経生理学的な聴覚過敏性とプレパルス抑制(PPI)といった聴覚性瞬目反射の制御機構を評価した。さらに、これらの聴覚性瞬目反射の指標と、評価した身体活動動態との関連について、時計型のウエアラブル身体加速度計(アクチグラフ)を用いて検討した。
その結果、ASDの聴覚過敏性は、日常生活における覚醒時の高い活動性と散発的な大きな活動低下という特徴との関連を認めた。これは、弱い音刺激に対する聴覚過敏性が大きいほど、覚醒時に過活動傾向を示す一方で、ときおり大きく活動が低下することを示しており、日中の多動傾向や急に動きがとまり固まったようにみえることに、聴覚過敏性が関係している可能性を示唆する結果としている。
今回の研究で用いられた聴覚性瞬目反射やアクチグラフによる身体活動動態の計測は、言語や動物種を問わず簡便に客観的・定量的に行動特性を評価できる計測法だ。研究グループは、「発達早期から日常的に容易に行動動態に関するデータが取得でき、今後基礎的・臨床的な知見が蓄積され、聴覚過敏性や併存する精神障害に関わる生物学的メカニズムが解明できれば、自閉症スペクトラムの新たな支援法の開発につながると考えられる」と述べている。
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・国立精神・神経医療研究センター プレスリリース