世界的な問題になっている薬剤耐性菌の増加
国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンターは8月6日、2017年の全国の抗菌薬販売量を発表した。
画像はリリースより
昨今、薬剤耐性菌の増加が世界的に問題となっている。抗菌薬は、使われれば使われるほど薬剤耐性菌の増加につながることが知られており、抗菌薬の使用を減少させることは、薬剤耐性菌を抑制するための重要な戦略のひとつである。
日本でも2016年に薬剤耐性(AMR)対策アクションプランが策定された。このプランでは2020年までの目標として、全抗菌薬の使用を33%、日本で処方されることの多い経口セファロスポリン系薬、フルオロキノロン系薬、マクロライド系薬の使用を50%減少させることを目標としている。
厚生労働省の委託事業として設立されたAMR臨床リファレンスセンターでは、薬剤耐性対策アクションプランを実行すべく、さまざまな取り組みを行っており、薬剤耐性に関する複数のサーベイランス情報を発信している。
経口セファロスポリン系薬は14.2%減少
2017年の抗菌薬販売量(13.78 DID※注1)は、2013年(14.95 DID)と比較して7.8%の減少がみられた。経口セファロスポリン系薬は14.2%、経口マクロライド系薬は13.5%、経口キノロン系薬は9.1%減少していた。なお、2018年5月に同センターが初めて発表した公開データでは、2013~2016年における全国の抗菌薬販売量はほとんど変化が見られていなかった。
※注1 DID(DDDs per 1,000 inhabitants per day)=人口や抗菌薬ごとの使用量の差を補正するため、抗菌薬販売量を1000住民・1日あたりのDefined Daily Dose(DDD)で表したもの
AMR臨床リファレンスセンターは、薬剤耐性(AMR)対策アクションプランに基づくさまざまな取り組みが行われたことが、今回の抗菌薬販売量の減少につながったと指摘。2020年までの目標達成に向け、より一層の適正使用推進に取り組んでいくとともに、積極的にサーベイランス情報を発信していくとしている。
なお、今回公開されたデータは、卸業者の販売量をもとに抗菌薬販売量データを算出したものであり、実際の医療現場での抗菌薬の使用実態をそのまま示すものではない。また、2018年5月に発表をした抗菌薬販売量集計データは、都道府県別の情報を公開していたが、抗菌薬の集計結果には当該都道府県以外を対象とした販売量も含まれる場合があり、使用量と乖離する可能性があることから、今回は全国の集計値のみを発表したとしている。