小児の心筋症全体の約3%を占めるミトコンドリア心筋症
千葉県こども病院遺伝診療センター・代謝科と千葉県がんセンター研究所の研究グループは7月30日、ミトコンドリア病の患者において、拡張型心筋症の新しい病因遺伝子としてTOP3A遺伝子を同定したと発表した。この研究は、同研究グループが埼玉医科大学、順天堂大学と共同で行ったもの。同様の症状を呈する症例が他国でも見つかり、英国・デンマーク・米国・サウジアラビア・トルコ・スペインなどとの国際共同論文として発表した。
画像はリリースより
ミトコンドリア心筋症は小児の心筋症全体の約3%を占め、また小児ミトコンドリア病の20~40%に心筋症を合併することが知られている。しかし、ミトコンドリアDNAおよび核DNAにコードされる多様な遺伝子異常が原因となること、原因不明の心筋症とされている症例において同症の検索が十分なされていないことなどの理由により、ミトコンドリア心筋症の全容、病態は十分に解明されていない。
ミトコンドリアDNAの複製に関与するTOP3A
研究グループは、低出生体重、成長障害、拡張型心筋症を呈した千葉県内の症例に対して包括的遺伝子解析を行い、新しい病因遺伝子としてTOP3A遺伝子を同定。同様の症状を呈しTOP3A遺伝子異常を認めた症例は、日本以外にも米国、アラブ首長国連邦、シリア、スペイン、サウジアラビアなどの計9症例においても発見されたことから、今回、国際共同論文として米国人類遺伝学会雑誌に報告した。
TOP3Aは、減数分裂や相同染色体の組み換えによるDNA複製(姉妹染色分体交換)の際に、染色体の適切な分離を促進する重要な酵素のひとつ。ミトコンドリアDNAの複製にも関与しているため、TOP3A異常症では、重篤な成長障害につながる染色体分離障害や、ゲノムの不安定性、また心筋症などのミトコンドリア障害を引き起こすという。
今回の国際連携による新しい原因遺伝子の発見は、心筋症を呈する成因の理解、ミトコンドリア障害を引き起こす病態解明の進展、国際的な新規治療法の開発などにつながるものと期待される。
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・日本医療研究開発機構 プレスリリース