軟骨細胞のミトコンドリアの機能低下が発症と悪化に関連
千葉大学は7月26日、食品素材のりんごポリフェノールが、変形性膝関節症の進行を抑制することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院細胞治療内科学の清水孝彦講師、横手幸太郎教授を中心とする研究グループが、アサヒグループホールディングス株式会社と共同で行ったもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載された。
画像はリリースより
変形性膝関節症は、膝関節の腫れや痛みを伴い、歩行が困難になるなど、生活の質を著しく低下させる運動器疾患。関節において緩衝作用を担う軟骨が擦り減ることが主な原因であり、骨への負担が増加することで症状が悪化する。未受診者を含め、現在国内には40歳以上の患者が2500万人いると推定されている。
主な治療は外科的処置となっており、服用による内科的治療は補助的なものとなっている。一方、近年の研究により、膝関節の軟骨細胞におけるミトコンドリアの機能低下が、変形性膝関節症の発症と悪化に関連していることが見出され、ミトコンドリアを介した治療法の確立が有望視されている。
ミトコンドリアの新生を促し、プロテオグリカン産出を促進
りんごから抽出されたポリフェノールには、強い抗酸化作用があり、抗腫瘍、抗肥満、抗疲労をはじめ、さまざまな効果を有することが報告されている。近年の知見により、これらの生理機能が発揮される一因として、りんごポリフェノールのミトコンドリアを介した作用機構が考えられている。
今回の研究では、軟骨細胞におけるりんごポリフェノールのミトコンドリアへの作用、ならびに変形性膝関節症におよぼす影響について検証。その結果、りんごポリフェノールは、軟骨細胞でミトコンドリアの新生を促し、軟骨の構成成分であるプロテオグリカンの産出を促進することが示唆された。また、変形性膝関節症モデルマウスでは、りんごポリフェノールがその症状悪化を抑制することを確認したという。
これらの結果について、研究グループは、「りんごポリフェノールは、変形性関節症の内科的治療分野における、有望な食品素材として期待できる」と述べている。
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