■認知度、患者アクセスに課題
医薬品リスク管理計画(RMP)の一環として製薬会社が作成する「患者向医薬品ガイド」の活用状況やその役割について、現状では製薬会社の担当者は手応えを全く実感していないことが、昭和薬科大学臨床薬学教育研究センター医薬品情報部門などが実施した研究によって明らかになった。「患者がガイドを活用していると思うか」と各担当者に聞いたところ「思う」との回答はわずか1.2%にとどまった。RMPとして役割を十分に果たしていると回答した担当者もほとんど存在しなかった。研究グループは、ガイドの認知度や患者のアクセス確保に課題があるとして、その改善を呼びかけている。
研究グループは、患者向医薬品ガイドを作成している製薬会社130社のくすり相談窓口担当者を対象にアンケート調査を実施した。調査期間は2017年9月1日から11月17日まで。85社から回答があった(回答率65.4%)
「患者がガイドを活用していると思うか」と聞いたところ、「思う」は1.2%だけで、「思わない」は42.4%、「分からない」は56.5%だった。「RMPとして役割を果たしていると思うか」の質問には「十分である」3.5%、「十分でない」29.4%、「分からない」67.1%との回答があった。製薬会社の担当者はガイド活用に全く手応えを感じていないことが明らかになった。
ガイド作成の負担を聞くと「負担が大きい」15.3%、「やや負担」48.2%、「負担でない」36.5%となり、負担を感じている担当者が多かった。その理由としては▽PMDAとの調整に数回のやりとりが発生する▽作業が細かくて手間がかかる▽添付文書の改訂ごとに変更が必要になる▽平易な言葉への読み替えが難しい――などの意見が上がった。
ガイドの公開状況について聞くと「すべて公開」は43.5%、「一部公開」は4.7%、「公開していない」は51.8%だった。ガイドの公開場所は「医療関係者向けサイト」が多く、「患者向けサイト」で公開している会社はごく少数だった。患者のアクセスに制限があることが分かった。
各社は、患者の求めに応じてガイドを提供する体制を構築しているが、患者からの問い合わせ状況を聞くと、全ての担当者が「ほとんどない」と回答。患者や家族への年間のガイド提供件数も0件と回答した会社が大多数を占め、10件以上提供している製薬会社はなかった。
患者向医薬品ガイドは、重大な副作用の早期発見などを促すために、薬の効果や使い方、副作用などの情報を分かりやすい言葉に置き換えて提供するもの。「くすりのしおり」との使い分けなどについて各担当者に意見を求めたところ「使い分けを明確にする、もしくはガイドとくすりのしおりを一本化することを検討すべき」「ガイドは患者が直接アクセスするもの、くすりのしおりは医療者が患者に説明する時に使うためのもので目的が異なるため、両方を提供すべき」などの声があった。
今回の調査結果を踏まえ研究グループは「患者や家族にガイドを周知させるには、医療機関等でのサポートやお薬手帳にガイドのQRコードを記載しアクセスの利便性を高める等の方策を検討する必要がある」と指摘。「ガイドの認知度向上や有効活用につなげるためには、ユーザーテストを実施し、その結果をガイド作成に反映することが必要」と呼びかけている。