Aβ凝集体を無毒化・除去するヒト化モノクローナル抗体
エーザイ株式会社と米バイオジェン・インクは7月26日、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体「BAN2401」の早期アルツハイマー病を対象とした臨床第2相試験の詳細結果を、米アルツハイマー病協会国際会議(AAIC2018)にて現地時間25日に口頭発表したと発表した。なお、この発表は、Late Breaking Abstractに採択されたと発表した。
BAN2401は、スウェーデンのバイオアークティックとエーザイの共同研究から得られた、アルツハイマー病に対するヒト化モノクローナル抗体。アルツハイマー病を惹起させる因子のひとつと考えられている神経毒性を有する可溶性のAβ凝集体に選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去する。
今回詳細結果が発表された201試験は、アミロイドの脳内蓄積が確認されたアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)および軽度アルツハイマー病(総称して早期アルツハイマー病)患者856人を対象とした、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、無作為化臨床第2相試験。被験者はプラセボ投与群および実薬投与群として2.5mg/kgバイウィークリー(2週間に1回)、5mg/kgマンスリー(月1回)、5mg/kgバイウィークリー、10mg/kgマンスリー、10mg/kgバイウィークリーの5用量5群に割り付けられた。
同試験では、中間解析の結果によって、より治療効果が高いと判定された投与群への割付比率を自動的に高めるベイジアンアダプディブランダム化デザインが用いられた。また、バイオマーカー評価として、アミロイドPETによる脳内Aβ蓄積、脳脊髄液中のAβ総量などを測定し、有効性評価(臨床)として、ADCOMS、CDR-SB、ADAS-cogを測定した。
脳内アミロイド蓄積量を有意に減少、症状の進行抑制も確認
アミロイドPET測定による脳内アミロイド蓄積量については、BAN2401は、用量依存的かつすべての投与量群で統計学的に有意な減少を示した。Centiloid法で標準化されたPET測定値の解析ではBAN2401最高用量投与群(10mg/kgバイウィークリー)における脳内アミロイド蓄積量の実測値は、ベースラインで平均74.5、18か月時点で平均5.5だった。統計的調整後(MMRM)の減少量の平均は、70ユニットと統計学的に有意かつ大きな減少を確認(p<0.0001)。また、アミロイドPET画像読影診断においてBAN2401は用量依存的にアミロイド陽性から陰性へのコンバージョンを示し、最高用量投与群の18か月時点における陰性へのコンバージョンは81%だった(p<0.0001)。
最終的な有効性を評価する18か月時点における臨床エンドポイント解析は、事前に規定された伝統的統計手法によって行われた。その結果、ADCOMSのベースラインからの用量依存的な進行抑制を確認。BAN2401最高用量投与群では、投与後18か月時点において、プラセボ群に比較して統計学的に有意な症状の進行抑制を示した(30%抑制、p=0.034)。また、投与後6か月時点から統計学的に有意な進行抑制が示され(p<0.05)、12か月時点でも統計学的に有意な進行抑制が認められた(p<0.05)。
また、BAN2401による用量依存的な進行抑制は、ADAS-cogにおいても確認。最高用量投与群では、投与後18か月時点においてプラセボ群に比較して有意な症状の進行抑制を示した(47%抑制、p=0.017)。CDR-SBにおいても、BAN2401による用量依存的な進行抑制が示され、臨床的に意味のある差として事前に規定した25%を、試験期間を通して上回った。投与後18か月時点における最高用量投与群のプラセボ群に対する症状の進行抑制は26%だった。プラセボ群における症状の悪化速度は、米国でのADNI(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)研究結果と同様の傾向だったとしている。
▼関連リンク
・エーザイ株式会社 ニュースリリース