政府のアレルギー疾患対策基本指針では、国が中長期的な戦略の策定について検討を行うことを明記。これを受け、厚労省は研究班を立ち上げ、10カ年戦略の予備的な検討に着手していた。今回、研究班の報告書がまとまったことから、新たに検討会を立ち上げて10カ年戦略の策定に向けた具体的な議論をスタートさせた。
厚労省は、三つのアクションプランに基づき10年後のゴールとビジョンを打ち出す全体像を提示。推進するアクションプランとして、▽先制治療等を目指す免疫アレルギーの本態解明に関する基盤研究開発▽免疫アレルギー研究の効果的な推進と評価に関する横断研究開発▽ライフステージなど免疫アレルギー疾患の特性に注目した重点研究開発――の3本柱を示した。
具体的には、プレシジョンメディシンに立脚した将来の先制治療の実用化や患者の意見を反映させるPPI(ペイシェント・パブリック・インヴォルブメント)の推進に関する研究、免疫アレルギー領域のアンメットメディカルニーズの調査研究開発、国際連携などの課題に取り組み、免疫アレルギー患者数の減少や患者をはじめ国民の参画、免疫アレルギー疾患の国際的研究開発基盤の確立、ライフステージに応じた医療の最適化などのゴールを目指す方向性を打ち出した。
この日の初会合では、海老澤元宏委員(国立病院機構相模原病院臨床研究センター副センター長)が国際連携について言及。ハチ毒の免疫療法が日本だけ保険適用外となっている例を紹介した上で、「企業が治験を行わないため、いつまでも日本では予防医療が不可能になっている」と指摘。「国際共同治験に日本が参加するよう国際的情報をキャッチして、このようなバリアを克服していくことが大事」と訴えた。
天谷雅之委員(慶應義塾大学皮膚科教授)は、免疫アレルギー患者数の減少を打ち出した10カ年戦略のゴールに言及。アレルギー疾患は症状がコントロールされている状態の患者も多いとし、「患者数を減らすよりもアレルギーを克服して苦しんでいない時間という要素を設定し、数値化することが必要ではないか」と、アレルギー疾患克服の“見える化”を提案した。
厚労省は次回会合で10カ年戦略の骨子案を議論し、9月下旬に報告書を取りまとめたい考え。