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AIによる早期胃がんの高精度な自動検出法を確立-理研と国がん

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2018年07月25日 PM12:15

医師の経験に依存する早期胃がんの画像診断

理化学研究所と国立がん研究センターは7月21日、少数の正解データにより構築された人工知能()による、早期胃がんの高精度な自動検出法を確立したと発表した。この研究は、理研光量子工学研究センター画像情報処理研究チームの横田秀夫チームリーダー、竹本智子研究員、国立がん研究センター東病院消化管内視鏡科の矢野友規科長、池松弘朗医長、堀圭介医員らの研究グループによるもの。研究成果は、米ハワイで開催された学会「40th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society」で発表された。

早期の胃がん患者には自覚症状があまりなく、がんが進行して症状が現れた場合でも、胃炎や胃潰瘍の症状と似ていることから、がんだとわかったときにはかなり進行しているケースがある。そのため、内視鏡を用いた検診による胃がんの早期発見が望まれている。しかし、早期胃がんの画像診断の正確さは医師の経験に大きく依存し、専門医であっても発見が難しい場合もある。

近年、消化管の内視鏡画像診断にコンピュータによる機械学習を導入し、熟練した医師に迫る消化管腫瘍の診断、自動検出に成功した例がいくつか報告されている。しかし、早期胃がんでは精度の高い自動検出の成功例はほとんどない。その理由として、機械学習に適用可能な早期胃がんに関するデータが十分に整備されていないこと、早期胃がんの多くは進行性胃がんや大腸がん、大腸ポリープなどと比べて形態的特徴や色の特徴が多彩で、正常粘膜における炎症との判別が難しいことなどが挙げられている。

研究グループは、(深層学習)によって内視鏡画像から早期胃がんを自動検出する方法の開発に取り組んだ。一般に、機械学習には数十~数百万枚の学習用データが必要だが、早期胃がんの場合、学習用データの準備は容易ではない。そこで、ディープラーニングに分類される「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)」に基づく、少ない学習用データで学習させる新たな方法を採用。CNNは、とくに画像の分類や識別で高い性能を発揮するディープラーニングのひとつである。

陽性的中率93.4%、陰性的中率83.6%

研究グループは、少数の正解画像から小領域をランダムに切り出し、さらにデータ拡張技術を利用して画像を約36万枚まで増加。その画像をコンピュータに学習させた結果、陽性的中率は93.4%、陰性的中率は83.6%と極めて高く、胃炎や胃潰瘍と特徴が似ているために判断が難しい例でも、高い確率で判断できることが判明したという。


画像はリリースより

また、内視鏡画像から早期胃がんの領域を自動検出する問題を、再学習を終えたCNNに与えた。早期胃がんには肉眼型分類として主に、明らかな腫瘤状の隆起が認められる「隆起型(Type0-I)」、明らかな隆起や陥凹は認められないが低い隆起が認められる「表面隆起型(Type0-IIa)」、わずかに粘膜の陥凹が認められる「表面陥凹型(Type0-IIc)」の3つのタイプがある。これら3つのタイプの早期胃がんの領域を検出させたところ、とくに発見が難しい表面陥凹型(Type0-IIc)でも、領域を自動検出することができたとしている。

さらに今回の研究では、内視鏡画像を横10個、縦9個のブロックに分割し、各ブロックに再学習を終えたCNNを適用することで、「がんらしさ」を数値化し、その高低を疑似カラーとして画像上に表示した。この方法では、検証用に用いた画像の全ブロックのうち、86.2%について正しく「がん」や「正常」の領域を自動検出できていた。画像1枚にかかる処理時間は、画像の入出力にかかる時間を除き、1枚あたり4ミリ秒(0.004秒)と、将来の臨床現場でのリアルタイム自動検出には十分な速度を実現したという。

今回の研究成果により、検診での胃がんの見逃しを減らすことで、早期発見、早期治療につながると期待できる、と研究グループは述べている。

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