日本漢方生薬製剤協会(会長加藤照和氏)は20日、大阪市内で記者会見し、高齢者人口がピークを迎えるとされる2040年に合わせ、同協会として取り組む新たな指針として「漢方の将来ビジョン2040―国民の健康と医療を担う」を発表した。新ビジョンは、科学的エビデンスの集積で医療用漢方製剤の有用性の一層の確立のほか、原料生薬の必要量の確保、漢方製剤の安定供給など喫緊の課題など8項目からなる。会見で加藤会長は「漢方製剤等の安定供給を通じて健康寿命の延伸など国民の健康と医療の貢献に向け、日漢協として新たなビジョンに沿って活動を継続していく」との考えを強調した。
新ビジョンでは、▽産官学連携のもと、科学的エビデンスをさらに集積し、医療における漢方製剤等の有用性をより一層確立する▽原料生薬の必要量の確保に努める▽原料生薬から最終製剤までの品質管理を強化し、高品質な漢方製剤等を安定供給する▽医療用漢方製剤の新剤形の開発や効能拡大に関する研究などを推進し、漢方製剤など多成分系医薬品の承認申請ガイドライン策定に協力する▽一般用漢方製剤および生薬製剤の開発を推進し、市販後の情報提供を強化していく▽会員会社のコンプライアンスと漢方製剤等の品質管理、安全管理をさらに強化し、信頼性を一段と高める▽地球環境や生物多様性の保全、野生動植物の保護に貢献すると共に、自然の恵みである生薬を通じて国際展開に積極的に取り組んでいく▽国民とのアウトリーチ活動の充実を図り、関係諸団体、学会、研究機関、行政等とのコラボレーションを強化する――の8項目を掲げる。
今年5月に政府が発表した「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」では、高齢者人口のピークを40年頃と予測。『将来ビジョン2040』の策定について「国が抱えるこれら問題に対し、わが国の伝統医学、伝統薬である漢方がどういったお手伝いができるかというのが発想の原点」とし、認知症やフレイルなど高齢者医療で漢方製剤の役割を果たすためのエビデンス集積に注力していく。
会見で加藤氏は、17年の医療用漢方製剤売上高が02年と比較し、数量ベースで2.1倍、金額ベースで1.7倍と伸長するなど「漢方製剤が国民医療に浸透、定着している」と指摘。漢方製剤の安定供給を実現するためには、「医療用漢方製剤が基礎的医薬品の対象となるよう求めていく」と強調した。