専門医、患者代表が治療の進歩についてそれぞれ見解を
ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「ヒュミラ(一般名・アダリムマブ)」の日本での発売10周年を記念したメディアセミナー「医師と患者の視点から語る、自己免疫性疾患治療の進歩と期待」が都内で開催(主催:アッヴィ合同会社)され、関節リウマチ、尋常性乾癬および関節症性乾癬、炎症性腸疾患(IBD)の専門医、患者代表が過去10年の治療の進歩について見解を表明した。
現在、ヒュミラは、関節リウマチ、尋常性乾癬および関節症性乾癬、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、腸管型ベーチェット病、クローン病、潰瘍性大腸炎、非感染性の中間部、後部または汎ぶどう膜炎などの自己免疫性疾患を適応としている。
初期に適応を取得した関節リウマチについて、慶応大学医学部リウマチ・膠原病内科教授の竹内勤氏が講演。2010年に米欧のリウマチ学会によって新たな診断基準と治療目標が設定されたのとほぼ同時期に、生物学的製剤が登場したことで治療が一変したと強調。竹内氏はRAでは進行すると、骨びらんや破壊性関節炎となるため、1970-80年代の教科書では『適切な治療をしないと半数が10年後には日常生活が不自由になる』と記述していたことを紹介し、「生物学的製剤が登場した現在ではそういう患者さんを見ることはほとんどなくなった」と説明した。
また、IBD専門医の立場からは北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センター長の日比紀文氏が登壇。IBDでは従来、潰瘍性大腸炎が5-アミノサリチル酸製剤とステロイド、クローン病が栄養療法しかなかった中で生物学的製剤が登場し、「抗TNF-α抗体は炎症細胞から放出される炎症性サイトカインのTNF-αを中和するだけでなく、TNF-α産生細胞を破壊することが分かり、驚異的な効果を示した」と解説し、「薬剤が無効で大腸や小腸を切除しなければならない難治性患者は激減した」と述べた。
自己免疫性の皮膚疾患である乾癬について聖母病院皮膚科部長の小林里実氏は「皮膚というのは隠せないこともあり、乾癬患者のQOLは、がん患者などに匹敵するほど悪いことが知られている」と述べ、「生物学的製剤の効果で『小学校のころからの夢だったTシャツが着られるようになりました』と話してくれた患者さんもいた。生物学的製剤の登場で治療は劇的に変わった、その恩恵は大きい」と指摘した。
自分なりの治療により自分なりの人生を選べるように
一方、各疾患の患者も自らの経験などを踏まえ生物学的製剤の恩恵について語った。
公益社団法人日本リウマチ友の会の長谷川三枝子氏は「(生物学的製剤の登場後)初めて治療に期待という言葉が使える時代になった。それまでのリウマチ患者は病気に支配される人生だったが、自分なりの治療により自分なりの人生を選べるような時代になりつつある」と発言。
また、認定NPO法人東京乾癬の会の大蔵由美氏は「乾癬による関節炎で9か所の骨が破壊され、大学病院で近い将来車いすが必要になると宣告された時に生物学的製剤が認可され、人生ががらりと変わった」と振り返った。
IBD患者の立場からはNPO法人IBDネットワークの萩原英司氏が「自分は過去に7度の入院を経験しているが、過去10年に診断されたIBD患者は生物学的製剤の登場もあって比較的早い寛解導入が得られている。この点が生物学的製剤の革新的なところ」と語った。
また、若年性特発性関節炎(JIA)親の会「あすなろ会」の栗原光晴氏は、4歳でJIAを発症した息子の療養について語り、「当初は非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)やステロイドしか治療薬がなく、ステロイドの副作用であるムーンフェイスや多毛症にも悩まされた。小学校入学後に生物学的製剤が使用できるようになり、従来は運動制限もあったなか、中学校時代にバスケット部 高校では陸上部に在籍して活動するなど、生物学的製剤には大分助けられている」と強調した。
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