17日に京都薬大で開いた調印式に3大学の学長が出席し協定書にサイン。「SCRUMプロジェクト」と題した取り組みが動き始めた。今後、運営委員会を設置して具体的な取り組みや内容を協議する。共同で構築できたものから順に来年度以降、薬学部の既存の教育内容を改良するなど、段階的に実行に移す計画だ。
共同して取り組む柱は三つある。一つは薬学生に対する教育の充実だ。科学的思考を基盤に複合的課題を解決できる能力を養う教育コンテンツを3大学共同で開発する。具体的には、6年間の薬学の学びを統合して活用できる6年次の教育プログラムや、実務事前実習プログラムなどの開発に取り組む予定だ。
長期実務実習後のOSCEの実施協力体制の構築、3大学の教育コンテンツを共有し活用するためのアーカイブ化とe-ラーニングシステムの整備も共同で取り組む。体制を確立できれば将来的には、3大学の単位互換も視野に入ってくるという。
京都薬大の後藤直正学長は調印式後の記者会見で「医療系学部の中で基礎科学を多く学んでいるのが薬学部の特徴。大きな宝を持ちながら、それを統合して社会の中で役立てることが難しかった。在宅医療現場などは複合的な課題を抱えている。科学的な思考を核として、その課題を解決できる教育コンテンツを開発する必要がある」と話した。
二つ目の柱は、社会に出た薬剤師の資質向上を支援する教育体制の構築だ。認定薬剤師教育講座やリカレント教育プログラムを3大学共同で開発し、実施する。薬学生に対するキャリア教育プログラムや就職支援プログラムの共同開発にも取り組み、薬剤師が活躍するフィールドを拡充する。
後藤学長は「6年制の薬学教育を経た学生を社会が十分に活用できていない。薬剤師職能のグレードアップだけでなく、様々な領域に出ていける薬剤師を育成したい」と語った。
三つ目の柱は、大学教職員の研究・教育マインドの醸成だ。3大学の共同研究を推進するほか、教職員の意識を向上させるFD・SDプログラムを共同で開発する。若手研究者やポスト・ドクターなどの人材交流を推進し、次世代教員の育成にも取り組む計画だ。