生体組織表面にシールのように貼り付けられる発光デバイス
早稲田大学は7月17日、生体組織表面にシールのように貼り付けられる体内埋め込み型の発光デバイスを開発し、同デバイスを担がんモデルマウスの体内に移植することで光がん治療に応用し、腫瘍を消失させることに成功したと発表した。この研究は、同大高等研究所の藤枝俊宣准教授、同大先進理工学研究科の山岸健人博士、同理工学術院の武岡真司教授ら、防衛医科大学校生理学講座の守本祐司教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Nature Biomedical Engineering」に掲載された。
体内埋め込み型の発光デバイスの研究や開発は、近年盛んに行われており、厚さミリメートルの薄膜状デバイスが数多く報告されている。小型化した発光デバイスを体内の腫瘍直下に貼り付けて固定し、無線給電式に点灯できれば、従来法では困難だった体内深部の臓器にできたがんを治療できる新たな医療技術として期待されている。しかし、腫瘍と光源の位置が少しでもずれると腫瘍に蓄積した光増感剤を効率よく励起できず、治療効果が得られない。そのため、生体内の臓器や組織上で長期間安定に固定できる、体内埋め込み型の発光デバイスの開発が望まれていた。
担がんモデルマウスの腫瘍消失に成功
研究グループは、柔軟性や伸縮性に優れるシリコーン製の高分子ナノ薄膜の表面に生体模倣型接着分子のポリドーパミン(PDA)をコーティングすることで、厚さミリメートルのシリコーン薄膜に対して生体組織への接着性を25倍向上させ、小型デバイスを縫合なしで生体内に2週間以上、安定に固定することに成功したという。また、無線給電式のLEDチップ(赤・緑)を担がんモデルマウス体内の腫瘍直下に固定し、無線給電アンテナを用いて10日間連続的に点灯させた結果、腫瘍を消失させることにも成功したとしている。
画像はリリースより
今回の研究では、光源を腫瘍の間近に設置できたため、従来型の光がん治療で用いられているレーザー光の1000分の1の光の強さのLEDでも顕著な腫瘍消失効果が得られた。さらに、これまで組織透過性の観点から「生体の窓」と呼ばれる近赤外光しか使われてこなかった光がん治療において、デバイスを体内埋め込み型にすることで、緑色光を用いた治療効率の高い光がん治療を世界に先駆けて実現したものだという。研究グループは、無線給電式・埋め込み型光がん治療の臨床応用が実現すれば、負担が少ない次世代型がん治療法として、将来、患者に恩恵をもたらすと期待される、と述べている。
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