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【協和病院、東大ら共同研究】単剤化達成で高い費用対効果-統合失調症治療の病棟業務で

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2018年07月18日 AM10:00


■薬剤経済学的手法で解析‐、東大ら共同研究

薬剤師が病棟薬剤業務を通じて主体的に関わり、統合失調症薬物治療において抗精神病薬の単剤化に導くことができれば、併用例と比較し優れた費用対効果を得られることが、村田篤信氏(医療法人慧眞会協和病院薬剤科)、五十嵐中氏(東京大学大学院薬学系研究科医薬政策学特任准教授)らの研究で明らかになった。同院の実例をもとに、抗精神病薬の単剤化症例は併用例に比べ、薬剤費が低額になるだけでなくQOL値が向上することを解明。病棟薬剤業務の費用も試算し、これらの数値から推計した。薬剤経済学的手法を取り入れて薬剤師業務の有用性を評価する研究の先駆けとしても、意義の大きい研究といえそうだ。

2015年4月から16年12月に協和病院に入院し、抗精神病薬が処方された統合失調症患者60人を対象に解析を実施。薬剤調整を行い患者状態が安定した時、または退院時にQOLを評価した。EQ-5Dに基づき、[1]移動の程度[2]身の回りの管理[3]普段の活動[4]痛みや不快感[5]不安やふさぎ込み――の5項目を3段階で評価し、QOLを数値に換算した。

退院時または評価期間終了時の抗精神病薬の処方剤数をもとに60人を単剤化例41人、併用例19人に分類。1例あたりの平均QOL値、年間薬剤費を解析した結果、単剤化例のQOL値は0.742と、併用例の0.631に比べ有意に高かった。年間薬剤費に有意差はなかったが、併用例の25万5619円に比べ、単剤化例は18万9917円と低い傾向を示した。

薬剤総合評価調整加算の対象になるクロルプロマジン(CP)換算値2000mgの抗精神病薬が投与されている症例の数値も算出した。該当症例がなかったため、抗精神病薬処方量とQOL値の相関に基づく回帰式をもとに、QOL値を0.433と推定。同用量で最高額となる処方内容をもとに年間薬剤費は84万3315円と算出した。

その数値から、薬剤経済学の指標として多用される「質調整生存年」(QALY)を計算。抗精神病薬の単剤化を100件達成した時の獲得QALYを推計したところ、併用例から単剤化した場合に11.1、CP2000mg例から単剤化した場合は30.9を得られることが分かった。

薬剤師の病棟薬剤業務の費用は、、病棟薬剤業務実施加算、薬剤管理指導料から算出。介入に伴って増えた費用を、獲得したQALYで割って算出する「増分費用対効果」(ICER)を計算した。その結果、薬剤師の病棟薬剤業務によって併用例から単剤化できた場合と、CP2000mg例から単剤化できた場合のいずれのICERも15万円/QALY以下だった。単剤化達成時の薬剤師の病棟業務は費用対効果に優れる介入であることが、客観的な数値で明らかになった。

ICER値は低いほど費用対効果に優れるとされ、一般的に500万~600万円/QALYが優劣の分岐点になっている。その基準値に比べて今回算出した病棟薬剤業務のICER値は大幅に低く、C型肝炎治療薬「」「」のICER値と比べても大幅に低かった。

村田氏は「善本正樹院長の方針と荒明哲也薬局長ら各医療職の協力を得て抗精神病薬単剤化推進を目的とした病棟薬剤業務を行い、約80%という全国トップクラスの高い単剤化率に至った。東邦大学薬学部教授で共同研究者である吉尾隆氏を理事長とする日本精神薬学会の理念をもとに今回の研究を実施した」と語る。

同院の薬剤師は、時間をかけて安全に抗精神病薬を減量するSCAP法や統合失調症薬物治療ガイドラインをもとに、抗精神病薬の切り替え手順や薬剤選択、処方剤数削減、用量設定などを医師に提案している。CP換算1000mg以上の症例の減量をSCAP法で行うには20~40週を要するが、精神科では病棟薬剤業務実施加算は8週間しか算定できない。安全な減量への薬剤師の介入が診療報酬で十分に手当てされていないため、その業務への薬剤経済学的裏づけを示す必要があるという。

共同研究者の五十嵐氏は「薬剤師の介入によって医療費が減ったことを示す研究はよく見られるが、医療費を削減できなくても、あるいは医療費は増えるかもしれないが、それでも行う意義ある介入は存在する」と言及。「今後、患者のアウトカムまで踏み込んで、薬剤師の様々な業務の薬剤経済学的な解析を積極的に行うことで、薬剤師の業務が今まで以上に社会的な評価を得やすくなるのではないか」と話している。

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