心機能の改善などが期待されるiPS細胞由来心筋シート
テルモ株式会社は7月11日、クオリプス株式会社に出資し、iPS細胞由来心筋シートの事業化に参画することを発表した。出資額は約2億円で、株式の持分比率は15%となる。
画像はリリースより
日本国内の循環器疾患の死亡数は、がんに次いで第2位で、高齢化が進む日本にとって、心不全は大きな問題となっている。心不全は、医学的には心臓の機能が低下している状態を指すが、日本循環器学会と日本心不全学会は、2017年10月に「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義している。
iPS細胞由来心筋シートは、ヒトiPS細胞から作製した他家の心筋細胞を主成分とした再生医療用の製品。心臓移植や補助人工心臓装着以外に有効な治療法がない重症心不全の患者の心臓に移植することで、心機能の改善や心不全状態からの回復などの治療効果が期待されている。
他家細胞を用いた培養・凍結保存でタイムリーな出荷が可能
テルモは、iPS細胞由来心筋シートの開発に関して、日本医療研究開発機構(AMED)の再生医療実現拠点ネットワークプログラムにおいて、大阪大学との機関間連携協定を締結している。これまでに、製造・品質管理方法の設定や安全性データの取得などで協力してきた。
また、同社は世界初の心不全治療用の再生医療等製品「ハートシート」を販売している。ハートシートは、虚血性心疾患による重症心不全の治療を目的とした製品。患者の脚から採取した骨格筋芽細胞を培養してシート状に調製し、患者の心臓表面に移植して使用される。ハートシートは自家細胞なので安全性が比較的高い一方で、移植に必要な細胞数を得るための培養に日数を要する。一方、iPS細胞由来心筋シートも培養に日数を要するが、他家の細胞を用いて培養した後に凍結保存ができるため、タイムリーな出荷が可能だという。
同社は今後も、再生医療に関する多様な製品の開発に携わることで、医療の発展に貢献するとしている。
▼関連リンク
・テルモ株式会社 プレスリリース