高脂肪食による促進が知られている前立腺がん
大阪大学は7月10日、高脂肪食による肥満によって前立腺がんが進行するメカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の藤田和利講師、野々村祝夫教授(泌尿器科学)らの研究グループによるもの。研究成果は「Clinical Cancer Research」に掲載された。
画像はリリースより
肥満と前立腺がんとの疫学研究により、高脂肪食が前立腺がんを促進することが知られている。しかし、メカニズムに関しては免疫不全マウスを用いた研究が主で、炎症・免疫細胞などのがん微小環境を含めた検討はなされておらず、ヒトに近いマウスモデルでの検討が必要だった。
セレコキシブや抗IL-6受容体抗体が有用な可能性
研究グループは、前立腺がんを発症する遺伝子改変マウスに高脂肪食を投与し、免疫細胞の変化を調べた。その結果、高脂肪食投与マウスでは、骨髄由来(免疫)抑制細胞(MDSC)が増殖し、マクロファージ由来のンターロイキン6(IL-6)が増加していることが明らかになったという。
このマウスに、抗炎症作用を有するセレコキシブまたは抗IL-6受容体抗体を投与すると前立腺がんの増殖は抑制され、MDSCの増加も抑制。これにより、高脂肪食による肥満が前立腺がん増殖をきたすメカニズムは、マクロファージ由来のIL6を介した前立腺がんの増殖促進と、がん促進作用のあるMDSCの増加によるものであることが判明したとしている。またこれらの現象は、肥満の前立腺がん患者でも確認したという。
今回の研究成果により、これまでにヒトでの前立腺がんに対して大規模臨床研究で効果がなかったとされるセレコキシブや、リウマチの治療薬として使われている抗IL-6受容体抗体が、一部の前立腺がん患者に有用である可能性があるという。また、高脂肪食および肥満をおこす生活習慣の改善が前立腺がんの発症予防および治療に役立つ可能性がある、と研究グループは述べている。
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