AMEDらが進める「スマート治療室プロジェクト」
日本医療研究開発機構(AMED)は7月9日、手術の進行や患者の状況を統合把握することにより、手術の精度と安全性を向上させる「スマート治療室」の「スタンダードモデル」が信州大学(信州大学医学部附属病院)に完成したことを発表した。これは、AMEDらが進める「スマート治療室プロジェクト」によるもの。同プロジェクトは、AMEDと東京女子医科大学、信州大学ら5大学、デンソー、日立製作所など11社が共同で行っている。これまでに「ベーシックモデル」が広島大学病院に、「ハイパーモデル(プロトタイプ)」が東京女子医科大学に設置されている。
画像はリリースより
現状、手術室などの現場では、多種多様な医療機器・設備から発生する膨大な情報を、医師やスタッフが限られた時間内で判断しつつ治療を行っている。AMEDは、こうした治療の現場においてIoTを活用して各種医療機器・設備を接続・連携させることで、手術の進行や患者の状況などの情報を瞬時に時系列にそろえて整理統合し、医師やスタッフ間で共有できる「スマート治療室」の開発を世界に先駆けて進めていた。
脳腫瘍に関する臨床研究で効率性や安全性などを検証
スマート治療室プロジェクトは、東京女子医科大が統括し、国内外の産業界で普及しているミドルウエア「ORiN(Open Resource interface for the Network)」を、コア技術とした汎用性の高い治療室用インターフェース「OPeLiNK(R)」をデンソーが中心となって開発。日立製作所のオープンMRIなどの手術室内医療機器・設備を接続している。2016年には「ベーシックモデル」を広島大学病院、「ハイパーモデル(プロトタイプ)」を東京女子医科大に設置し、機器のパッケージ化や新規アプリケーションなどの開発を進めてきていた。
今回、OPeLiNKを備えた「スタンダードモデル」手術室が信州大学病院の包括先進医療棟内に完成。各種医療情報を「時系列の治療記録」として収集・提供(表示)し、手術室外の医師・技師らにも共有することで、治療の効率性や安全性の向上が期待される。また、これらを検証するための脳腫瘍に関する臨床研究を7月より開始するという。
スマート治療室の情報は将来的にはビッグデータとしての解析も可能で、保守・管理の面でも、機器操作ミスの防止や機器故障の未然検知、コスト管理(稼働時間の短縮)に大きなメリットをもたらすと考えられる。今回設置された「スタンダードモデル」は、2019年度内の事業化を目指しており、パッケージとしての手術室の販売は日立製作所らが担当する。また、2018年度末には臨床研究可能な「ハイパーモデル」を東京女子医科大学に設置し、ロボットベッド、新規精密誘導治療などの新技術を2020年度以降、適宜リリースしていく予定としている。
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・日本医療研究開発機構 プレスリリース