HCN4遺伝子多型と頻拍誘発性心筋症の関連を検討
広島大学は7月10日、心房細動患者が心不全を起こす頻拍誘発性心筋症の症例に、HCN4(IFチャネル)遺伝子多型(rs7164883)の変異型が多いことを発見したと発表した。同研究は、同大大学院医歯薬保健学研究科循環器内科の中野由紀子准教授、木原康樹教授、同消化器・代謝内科の越智秀典客員教授、茶山一彰教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米科学誌「Circulation: Genomics and Presision Medicine」オンライン版に掲載された。
画像はリリースより
心房細動患者の中で、心機能低下を起こす人を予測できれば、早期治療介入することで心不全を予防することが可能となり、患者のQOL改善、死亡率改善に有用となる。また、不要な入院を回避することで、医療経済的にも費用対効果の改善につながることが期待される。
HCN4は、心臓の刺激伝導系という電気の通り道に発現する分子で、自律神経の影響を受けながら人の脈拍の数をコントロールしている。研究グループは今回、HCN4遺伝子に着目して、HCN4遺伝子多型と頻拍誘発性心筋症の関連を調べた。
変異型、頻拍誘発性心筋症を起こした患者で有意に多く
研究グループは、広島大学病院で心房細動の治療を行った930人について、代表的な17個のHCN4遺伝子多型を調査。その結果、頻拍誘発性心筋症を起こした73人では、起こさなかった857人に比べてHCN4遺伝子多型変異型(rs7164883AGまたはGG)が有意に多いことを発見(変異型有26%vs9.7%)。さらに、広島大学病院と名古屋第二日赤病院で心房細動治療を行った350人について、その結果を確認すると、頻拍誘発性心筋症を起こした41人では、起こさなかった309人に比べてHCN4遺伝子多型(rs7164883)が多いことが確認できたという(変異型有28%vs9.9%)。
HCN4遺伝子多型が頻拍誘発性心筋症の原因のひとつであるということは、頻拍誘発性心筋症のメカニズムを考える上でも重要であると同時に、初めての分子遺伝学的マーカーの発見という意味で非常に重要だ。研究グループは、「HCN4遺伝子多型変異型を有する患者ではより早く治療介入し、厳格な脈拍数のコントロールや心房細動を治療することにより、心不全の発症を予防できる可能性がある。また今後、心不全患者の脈拍数を下げるために、Ifチャネル阻害薬(ivabradine)などの効果の可能性についても検討していきたい」と述べている。
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・広島大学 研究成果