小児のネット習慣と知能や脳容積の発達的変化の関連を調査
東北大学は7月10日、頻繁なインターネット習慣が小児の広汎な脳領域の発達や言語性知能におよぼす悪影響を発見したと発表した。この研究は、同大加齢医学研究所・認知機能発達(公文教育研究会)寄附研究部門の竹内光准教授、川島隆太教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米脳画像雑誌「Human Brain Mapping」に採択され、電子版に掲載された。
画像はリリースより
若年者における頻回のインターネット習慣は、学業成績の悪さなどと関係することが知られ、頻回のインターネット習慣がある人は、後に抑うつ感や孤独感などの増加につながることも知られていた。さらにインターネット中毒に関しても研究が進められ、インターネット中毒の人は、低い実行機能や注意能力、高い衝動性などを示し、また脳の背外側前頭前野や前島、眼窩皮質といったさまざまな領域の脳容積が小さいことが知られていた。
これまでの脳画像研究では、インターネット習慣の影響に関して、認知機能や脳神経メカニズムへの影響が縦断的に研究されていなかった。今回の研究では、このようなことを明らかにするため、健常小児のインターネット習慣とその後の知能や局所脳容積の発達的変化との関連を調べた。
言語知能が相対的に低下、灰白質・白質の容積にも影響
今回の研究は、一般から募集した悪性腫瘍や意識喪失を伴う外傷経験などの既往歴のない健康な小児を対象に実施。研究参加者は、最初に日々どれだけインターネットを行うかの生活習慣などについての質問に答え、知能検査とMRI撮像を受けた。最初の参加時において、研究参加者の年齢は5~18歳だった(平均約11歳)。これらの研究参加者の一部が、3年後に再び研究に参加し、再度、知能検査とMRI撮像を受けた。
解析に必要な脳画像データが揃っている224名の初回参加時と2回目参加時のデータを解析し、初回参加時における「週にどの程度の回数インターネットをする習慣があるか」が、どのように各参加者の初回から2回目参加時の言語性知能、動作性知能、総知能、脳の局所灰白質量・局所白質量の変化を予測していたかを解析。これらの解析は、性別、年齢、親の教育歴、家庭の世帯収入、居住地域の都市レベル、睡眠時間、さらに初回参加時の知能等各種交絡因子を補正した。
解析の結果、初回参加時における頻回インターネットを行う習慣は、2回目参加時の言語性知能低下とより大きく関係していた。同様に、初回参加時における頻回のインターネット習慣は、2回目参加時への広範な領域の灰白質の発達的増加の少なさと関連。同様に、初回参加時における頻回のインターネット習慣は、2回目参加時への広範な領域の白質の発達的増加の少なさと関連していたという。
今回の研究によって、インターネットの頻回な習慣が神経系の好ましくない神経メカニズムの発達と言語知能の遅れとつながることが示唆された。研究グループは、「発達期の小児の頻回のインターネット習慣には一層の注意が必要であると示唆されたと考えられる」と述べている。
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