厚労省は、薬機法改正に向けた検討事項として、薬剤師が調剤時だけでなく、患者の状況に応じて、丁寧な患者の服薬状況の把握を行い、その結果をかかりつけ医と共有するなど、薬剤師の専門性をより発揮できるような対人業務を強化する仕組みを挙げた。
また、地域における在宅対応を含め対人業務を充実させるため、「その業務実態を精査し、調剤機器やオンラインによる服薬指導の活用など、ICT技術の活用等により業務効率化を進めることも重要ではないか」との論点も示した。
山口育子委員(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「医薬分業率は上昇したが、そのメリットを感じられていないことが問題」と指摘した上で、「薬局・薬剤師は危機感を持って変わっていくべき」とした。
中川俊男委員(日本医師会副会長)も、院外処方の調剤関連技術料や患者負担が院内処方に比べて高いことを問題視し、「医薬分業自体を見直す時期に来ている。院内処方に回帰する議論があってもいい」と指摘。このほか、「医薬分業のありがたみは感じていない。在庫管理を心配せずに自由に処方ができるくらい」などの厳しい意見が出た。
乾英夫委員(日薬副会長)は、「その通りだと思っている。処方箋受取率も上がり、ほぼインフラ整備もできた。国民、患者、地域住民のために役割を果たしているかということが突き付けられており、われわれも変わっていかなければならない」と述べた。
■「薬局の役割」明記提案も委員は否定的
この日の会議では、乾委員が、日薬と日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会の3団体が意見交換して方向性を整理した「これからの薬局・薬剤師のあり方等について(意見)」を提示。
現在の薬機法では、「薬局」は薬剤師が調剤の業務を行う場所としてしか定義されていないため、調剤に偏ることなく、要指導医薬品・一般用医薬品を含め、全ての医薬品・衛生材料などを供給する機能を持つ施設であることや、地域で多職種連携を図るよう努める必要があることなどを法律上明確に定義するよう求めた。
その上で、在宅医療に対応する薬局、高度薬学管理機能を持つ薬局など、各施設が持つ機能に応じて薬局を分類することが必要とした。
また、多店舗展開している薬局などで、薬局開設者と管理者の間に「中間的総括者」が存在していることに触れ、ガバナンス確保の観点から、開設者や管理者の責任の明確化や罰則の強化だけでなく、法令上明確になっていない中間的総括者の位置づけや責任についても整理するよう求めた。
このほか、過疎地域や中山間地域なども含めて安定的に医薬品を供給できるよう、地域ごとに「医薬品供給体制確保計画」(仮称)を策定することも提案したが、中川委員は、「薬局の役割」を法律上明確にすることに対して、「わざわざ法律に書き込まないとできないことか」と指摘した。
花井十伍委員(NPO法人ネットワーク医療と人権理事)も、「薬剤師の職能が十分に生かされていない」ことが問題で、法律に役割を明記するかどうかについては、「後で議論すればいい」など、否定的な意見が出た。