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運動時に生じる誤差の原因を区別して修正する脳の仕組みを解明-阪大

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2018年07月11日 PM12:00

」と「」を区別する脳の働き

大阪大学は7月6日、大脳皮質の頭頂葉が、手を伸ばす運動の誤差の原因を区別して修正用の信号を発していることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院生命機能研究科ダイナミックブレインネットワーク研究室の北澤茂教授と大阪大学国際医工情報センターの井上雅仁特任准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米科学誌「Current Biology」電子版に掲載されている。


画像はリリースより

運動を上達させるには練習が欠かせない。その理由は、練習を繰り返すことで運動の「間違い」を減らすように脳が「学習」するからである。この「間違い」には2つの種類あり、例えば、ストライクゾーンの「ど真ん中」にストレートが来ることがわかっていて、そこを狙ってバットを振ったのに、ボールの上方10cmの空を切った場合は、「自分の運動制御の不手際が原因」である。このような運動誤差に対しては、意図と運動制御の関係を下方向に修正する必要がある。一方、バットはど真ん中を通過したのにボールが落ちてボールの上方10cmの空を切った場合は、「相手の想定外の動きが原因」である。このような目標誤差に対しては、意図と制御の関係は変えずに、相手の動きを予測するシステムを別に準備して学習させる方が合理的だ。

これら運動誤差と目標誤差を脳はどのように区別し、学習しているのか。区別しているとすれば、それぞれの担当部署は脳のどこにあるのか。今回、研究グループは、サルの頭頂葉に狙いを絞り、(1)運動誤差と目標誤差の検出にあたる場所はどこか、また、(2)それらの信号が本当に学習に用いられているかどうか、の2点を調べたという。

自動運転システムの改良やロボット制御の改善にも応用可能

その結果、大脳皮質の頭頂葉が、手を伸ばす運動の際に生じる誤差の原因を区別して修正していることを発見。また、頭頂葉のブロードマン5野は、自分が原因の誤差(運動誤差)を検出して修正信号の発信を担当していること、ブロードマン7野は相手の動きが原因の誤差(目標誤差)を検出して修正信号の発信を担当していることが判明したという。

この研究結果より、脳が「運動誤差」と「目標誤差」のシステムに分かれていることが判明したことは、スポーツトレーニング法の改善に示唆を与えるという。まず、第一段階として、「目標誤差」がない状態で「運動誤差」を徹底的に最小化するトレーニングを行うことが効率よく、さらに次のステップで「目標誤差」に対する対処法の学習を、「運動誤差」の系に影響を与えないかたちで行うのが理想的としている。

また、機械制御の分野にも大きな示唆を与えるという。自動運転で事故が起こった(起こりかけた)場合の修正は、まず車の制御系に問題があるのか(運動誤差)、歩行者の飛び出し、あるいは対向車のはみだしに原因があるのか(目標誤差)を切り分ける必要がある。脳が運動誤差と目標誤差を切り分けていることが判明したことで、深層学習を使った脳型人工知能を開発し、両者を切り分けることが可能と考えられる。このような、両者を切り分ける人工知能システムは、自動運転システムの改良や、ロボット制御の改善に大きな貢献をすると期待されるとしている。

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