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ゲノム編集技術CRISPR/Cas9で白血病細胞株に薬剤耐性の遺伝子変異を導入-山梨大

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2018年07月10日 PM01:00

求められる理想的な遺伝子変異モデルの樹立

山梨大学は7月6日、CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いて白血病細胞株に薬剤耐性の遺伝子変異を導入することに世界で初めて成功したと発表した。この研究は、同大医学部小児科学講座の玉井望雅と犬飼岳史准教授らの研究グループが、筑波大学および大阪大学と共同研究で行ったもの。研究成果は、Nature出版の電子ジャーナルである「Scientific Reports」にオンライン掲載された。


画像はリリースより

分子標的療法剤は、従来の化学療法剤と比較して高い有効性と安全性が期待できるが、治療中に効果が低下して疾患が増悪・再発することがある。その場合、がん細胞の標的分子の遺伝子に高い頻度で変異が発生している。その結果、標的分子の特定のアミノ酸が別のアミノ酸へと置き換わることで分子標的療法剤の標的分子への結合が阻害され、がん細胞が薬剤耐性を獲得する。

この病態を克服するためには、標的分子に遺伝子変異を持つモデル細胞を樹立して、そのモデル細胞系を用いて機能的な解析を進め、有効な薬剤を選別していくことになる。これまで、モデル細胞を樹立する方法としては、変異のある標的分子を発現ベクターによって遺伝子導入するのが一般的だった。しかし、この方法だと細胞が本来持っている標的分子に上乗せする形で変異型の標的分子が発現される点が問題とされてきた。理想的なモデル細胞系としては、細胞が本来持っている標的分子の遺伝情報を変異型の遺伝情報に置き換えることが求められる。

T315I変異を白血病細胞株のBCR-ABL1遺伝子に導入

研究グループは、白血病細胞の標的分子の遺伝情報を、CRISPR/Cas9によるゲノム編集で変異型の遺伝情報へと置き換える相同組み換えを試みた。しかし、白血病細胞を含むがん細胞では、しばしば相同組み換えを行うのに必要なDNA修復に関わる仕組みが正しく機能しなくなっていることがあり、CRISPR/Cas9によるDNA切断部位は、「お手本」の一本鎖DNAがあっても応急的な繋ぎ合わせによって修復されてしまう。この問題点を克服するため、相同組み換えするためのDNA修復機構が維持されているかどうかを、PARP阻害剤に対する耐性を指標にして評価。白血病細胞株のPARP阻害剤に対する感受性を解析した結果、多くの細胞株では細胞死の誘導が観察されたが、一部の細胞株は耐性を示した。研究グループはそこで、PARP阻害剤に耐性を示した白血病細胞株を対象にして、遺伝子変異の導入を試みた。

その結果、PARP阻害剤に対して耐性を示すことが、がん細胞株においてCRISPR/Cas9による相同組み換えが成功する指標となる可能性が示唆された。そして、CRISPR/Cas9による相同組み換え技術によって、慢性骨髄性白血病に特異的な分子標的療法剤であるイマチニブに対する耐性獲得の代表的な機序であるT315I変異を、白血病細胞株のBCR-ABL1遺伝子に導入する事に成功したという。

今回の研究成果について、研究グループは、「この方法を応用することで、多様ながんに対する種々の分子標的療法剤における耐性変異の機能的な影響を正しく評価し、その耐性を克服する新規治療薬の開発へと発展させること可能になると期待される」と述べている。

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