心疾患系疾患の予防作用などで注目されるポリアミン
協同乳業株式会社は、腸内ポリアミンが複数の腸内細菌の代謝経路を経由して生合成され、その生合成経路はビフィズス菌などが産生する酸により作動することを明らかにする研究結果を発表した。この研究は、同社の松本光晴主幹研究員、京都大学の東樹宏和准教授、石川県立大学の栗原新准教授、理化学研究所の辨野義己特別招聘研究員らとの共同研究によるもの。研究成果は、米科学誌「Science Advances」で公開された。
画像はリリースより
腸内細菌の活動により生成される物質(代謝産物)は、ヒトの健康に大きな影響を与えると考えられている。腸内細菌は難培養性細菌も含め1,000種以上が確認され、腸管内ではこれらが複雑に相互作用している。しかし、その複雑さゆえに、特定の代謝産物の生合成・放出メカニズムを解明する研究はほとんど行われていなかった。
ポリアミンは最近の研究で、オートファジー誘導や抗炎症作用を介した動脈硬化など、心血管系疾患の予防作用などが明らかになり、注目されている。ヒトを含む動物にとって、重要なポリアミン供給源のひとつは、腸内細菌の産生するポリアミンである。研究グループは、ビフィズス菌LKM512とアルギニンの併用経口投与によって、腸内プトレッシン(ポリアミンの一種で強い機能性を有するスペルミジンなどの前駆体)濃度を高め、マウスにおける保健効果を報告してきていたが、その生合成・放出メカニズムについては未解明だった。
ポリアミンでの予防・軽減を目的とした商品開発へ
今回の研究では、ビフィズス菌などの酸生成細菌が産生する酸をトリガーとし、複数の腸内細菌の独立した代謝経路(生き残り戦略)、すなわち、酸から身を守る耐酸性機構とエネルギー産生機構が組み合わさったプトレッシン放出経路「ハイブリッド・ポリアミン生合成機構」を、遺伝子レベルの解析で明らかにした。ハイブリッド・ポリアミン生合成機構は、遺伝子および分子レベルで実証され、不確定因子が無いことから、ヒト応用研究において、腸内ポリアミン濃度コントロール技術が確立され、保健効果が得られる蓋然性が高いと考えられるとしている。
協同乳業は、腸内プトレッシン濃度の増加により血中スペルミジン濃度が上昇することをマウス実験で報告済み、かつヒトを用いた予備的検討においてアルギニンとLKM512を併用摂取することで、糞便中プトレッシン濃度が上昇することも確認済みである。これらの共同研究を継続することで、近い将来、ハイブリッド・ポリアミン生合成経路を作動させ、体内に効率的にポリアミンを供給できるヨーグルト、飲料およびサプリメントなどの開発を行っていきたいとしている。
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