今回、報告書の分析対象期間(1~3月)に徐放性製剤の「ニフェジピンCR錠」を粉砕し、胃管から投与したところ、血圧低下を来した事例が報告されたことから、同事例を過去に遡って検索し、錠剤の粉砕に関連した事例について分析が行われた。報告件数は、12年1月から今年3月までに報告された医療事故情報のうち、錠剤の粉砕の関連事例は3件あり、全て徐放性製剤を粉砕して投与した事例だった。
徐放性製剤は、有効成分の放出速度、放出時間、放出部位を調節した製剤。添付文書には、割ったり、砕いたり、すりつぶしたりせず、そのまま噛まずに服用させるよう注意事項が記載されている。今回、報告されたのは、徐放性製剤を患者が経口内服できないため粉砕して投与したところ、体内で急速に吸収されて影響が出たという事例。「ニフェジピンCR錠」による血圧低下が2件、癌疼痛治療剤「オキシコンチン錠」による意識レベルの低下や呼吸機能悪化が1件あった。
具体的には、患者は肺炎、高血圧症で意識障害があり、経鼻胃管を挿入していた。全身状態が改善したため、内服していた「ニフェジピンCR錠20mg」を再開する方針が決まり、研修医は患者が経鼻胃管を挿入しているとは知らず、同錠を処方。看護師は、錠剤で届いた同錠を粉砕し、経鼻胃管から投与した。
30分後に血圧を測定したところ、収縮期血圧が90mmHg台、1時間後には80mmHg台まで低下した。病棟薬剤師は当日、薬剤部で業務をしており、翌日に患者の急激な血圧低下に関するカルテ記載を発見。原因を調べたところ、経鼻胃管を挿入している患者に同錠を粉砕して投与していたことに気づいた。
こうした事例が発生した要因として、医師や看護師が徐放性製剤の特性を知らないまま、患者に処方や投与をしていたことが判明。薬剤師の関与が難しい状況で徐放性製剤の投与が行われ、誤った投与方法を防げなかったことが分かった。
また、医師は病棟薬剤師が作成した粉砕不可一覧表を活用しておらず、粉砕して投与できる代替薬について薬剤師に問い合わせなかったことも要因として考えられた。
同機構は、薬を処方する医師や投与する看護師は、薬には有効成分の放出を調節した徐放性製剤があることを知っておくことが重要と指摘。薬の形状を変えて投与する必要がある場合、粉砕して投与できるか、または経管投与に適した代替薬があるか薬剤師に確認するなど、情報収集した上で処方する必要があると注意喚起した。