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【東大育薬グループ】疑義照会が生じた原因分析-医師と患者の情報伝達に問題

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2018年07月06日 AM10:15

薬剤師の疑義照会が発生した原因のうち「医師と患者間の情報伝達に問題」が最も多く、全体の25%に達することが、東京大学大学院薬学系研究科育薬学講座などの研究によって明らかになった。次いで「医師の処方作成に問題」が23%を占めていた。疑義照会内容を分析した報告は存在するが、そもそもなぜ疑義照会をする必要があったのかを原因まで遡って分析した報告はほとんどない。原因を分析し対策を講じて疑義照会を減らすことができれば、薬剤師は浮いた時間を患者の服薬ケアに使えて、より良い薬物治療の提供につながるという。

研究グループは2018年1月28日から2月25日までの約1カ月間、アインホールディングスの約700薬局で実施した疑義照会事例を収集。疑義照会に関与した薬剤師に詳細な内容を入力してもらい、それを分析した。

薬剤師の記入内容から疑義照会の発生原因を抽出できたものは1061例中261例だった。疑義照会の発生原因を12のカテゴリーに分類した結果、「医師と患者間の情報伝達に問題」が最も多く、次いで「医師の処方作成に問題」が続いた。「医療機関職員間の情報伝達に問題」「医師の患者情報の確認に問題」などを含め、処方元である医療機関、特に医師のミスが原因となった疑義照会が全体の約6割を占めたという。

「医師と患者間の情報伝達に問題」の原因をさらに小カテゴリーで分類したところ「患者が医師に自分の情報を伝えようとしなかった」が38%と最も多かった。このほか、▽医師の患者からの聴取が不足していた▽患者が医師にお薬手帳を提示しなかった▽患者が医師に伝え忘れた▽患者が医師に伝え間違えた▽患者の話がきちんと医師に伝わっていなかった――を加えた六つの原因が、この大カテゴリー内の約8割を占め、疑義照会全体の2割以上を占めていた。患者の情報が医師まで届かなかったために疑義照会が発生した事例が多かった。

疑義照会内容を分析したところ、「用法・用量」が37%と最も多かった。「」18%、「疾患・生理状態への禁忌・慎重投与」8%、「副作用」8%を加えると、これら四つで全体の約7割を占めていた。用法・用量の疑義照会では過量投与や過小投与が多かった。

同講座の加藤木俊廣氏は「疑義照会の多くは医療機関におけるミスを発生原因としていることが分かった。何らかのアプローチによってこのミスを回避できれば、疑義照会の数を減らせる」と指摘。「今後は、医師による患者聴取の強化や、患者からの自発的な情報提供を促進させ、医師と患者間のコミュニケーションの強化を図ることが必要。患者への教育や医師の研修の推進、薬剤師による補助などが必要と考えられる」と話している。

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