およそ10万人を対象とした20年間の追跡調査で判明
東北大学は7月4日、喫煙と交通事故の関連を検討した前向きコホート研究において、男性で喫煙者ほど交通事故による死亡リスクが高い傾向にあるという研究結果を発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科国際歯科保健学分野の相田潤准教授らによるもの。研究成果は、「Journal of Epidemiology」にてオンライン公開された。
画像はリリースより
これまでの研究で、喫煙はがんや循環器疾患などによる死亡リスクを高めることが報告されており、外因死との関連についても研究されてきていた。外因死には転倒、交通事故、窒息、火災といった不慮の事故、他殺、自殺などの死亡が含まれているが、交通事故による死亡と喫煙との関連を検討した研究は多くなかった。
そこで研究グループは、喫煙と交通事故死亡の関連について検討。茨城県内38市町村における基本健康診査受診者(40~79歳)9万7,078人を対象とし、1993年以降、生命予後を住民基本台帳や人口動態調査死亡票の情報を用いて、20年間追跡した。そのうち追跡不能であった者および主要なデータに不備のある者694人を除外した9万6,384人(男性3万3,018人、女性6万3,366人)のデータを解析に用いた。
説明変数は、ベースライン時の問診票の喫煙状況を使用。「非喫煙者」、「過去喫煙者」、「1日20本未満吸う現在喫煙者」および「1日20本以上吸う現在喫煙者」に分類。目的変数は、追跡調査にて把握した交通事故による死亡の発生とした。また、共変量として年齢、飲酒状況を用いた。性別で層化し、ベースライン時点から交通事故死亡発生までの生存時間を考慮したCox比例ハザードモデルで交通事故死亡発生のハザード比を算出した。
女性は喫煙者が少なく統計解析できず
その結果、交通事故による死亡は、男性の非喫煙者では7,335人中31人(千人年あたりのイベント発生率=0.24)、過去喫煙者では9,115人中46 人(0.30)、1日20本未満吸う現在喫煙者では5,125人中29人(0.36)、1日 20本以上吸う現在喫煙者では 11,403人中62人(0.32)だった。女性の非喫煙者では5万9,832人中127人(0.12)、過去喫煙者では461人中1人(0.13)、1日20本未満吸う現在喫煙者では 2,021人中0人、1日20本以上吸う現在喫煙者では1,052人中0人だった。
年齢、飲酒状況を考慮したモデルにおいて、男性では、非喫煙者と比較して1日20本以上吸う現在喫煙者は交通事故による死亡のハザード比が高い傾向にあることが判明(HR=1.54、95%CI=0.99,1.39)。一方、女性では喫煙者の人数が少ないこともあり、観察期間中の喫煙者の交通事故死亡を認めず、統計解析を行うことができなかったという。
今回の研究結果により、喫煙習慣が交通事故死亡のリスクを高める可能性が示唆された。しかし、運転中の喫煙ではなく、ベースライン時の喫煙習慣を用いていることから、この誤分類は真の推定値を過小評価している可能性があるという。また、同研究の交通事故死亡には、自動車による道路交通事故だけでなく、鉄道交通事故、水上交通事故、航空交通事故による死亡や歩行者の死亡なども含まれている。このことも、喫煙と交通事故死亡の関連の過小評価につながっている可能性がある。これらのことから、この研究の結果は堅固なものであると考えられるとしている。
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