NUDT15遺伝子のコドン139を副作用の予測に活用
東北大学は6月29日、チオプリン製剤の重篤な副作用を予測する日本人に最も適切な遺伝的マーカーを同定し、その遺伝的マーカーを検出するキットを開発したと発表した。この研究は、同大病院消化器内科の角田洋一助教らの研究グループによるもの。研究成果は、科学雑誌「Journal of Gastroenterology」掲載されるのに先立ち、オンライン版に公開されている。
画像はリリースより
チオプリン製剤は、炎症性腸疾患を始め、小児の急性リンパ性白血病を始めとする白血病、リウマチ性疾患、臓器移植後の治療に効能効果が認められる安価かつ有用な薬剤であり、日本国内で広く使用されている。しかし、日本人を含む東アジア人では、チオプリン製剤を投与した一部の患者において、早期に重度の白血球減少症や全脱毛といった重篤な副作用を生じることが知られている。
近年、チオプリン製剤の投与による重篤な副作用には、NUDT15遺伝子多型が強く関連していることが発見された。さらに、同研究課題の分担研究のひとつである臨床研究プロジェクト「NUDT15遺伝子多型検査の有用性に関する多施設共同研究」では、日本人の炎症性腸疾患患者において、NUDT15遺伝子のコドン139がチオプリン製剤の投与による重篤な副作用を予測するための遺伝的マーカーとして最も有用であることを報告していた。
検出キットの活用で、正確で迅速な検査が可能に
そこで今回、研究グループは、適切な治療選択に結びつけることを目的に、チオプリン製剤の投与による重篤な副作用に関与するNUDT15遺伝子のコドン139の遺伝子多型の情報を正確かつ迅速に提供できる体外診断用医薬品キットの開発を、株式会社医学生物学研究所(研究開発分担者:阿部由紀子氏)らと共同で実施した。
開発したキット(製品名:MEBRIGHT NUDT15キット)は、患者の血液から抽出されたゲノムDNAを検体に用いてNUDT15遺伝子多型を検出する試薬。リアルタイムPCR法を原理としており、3種類のアレル(アルギニン、システインもしくはヒスチジンをコードする塩基配列)に対応する蛍光標識プローブの反応から、検体中のNUDT15遺伝子のコドン139の遺伝子多型を検出する。また、同キットの試薬調製から判定までに必要な時間はおよそ2時間程度であり、多数検体の同時測定も可能なことから、迅速性を特徴としている。
日本人では、重篤な副作用を発症するリスクの高いNUDT15遺伝子のコドン139の塩基配列がシステインとなる遺伝子多型のみを持つ人の割合は、1%程度と報告されている。研究グループは、「チオプリン製剤による治療法を医師が安心して選択できるようになり、また重篤な副作用を恐れてより高額な別の治療法を選択していた患者がチオプリン製剤を使うようになることで医療費の適正化にも貢献するものと期待される」と述べている。
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・東北大学 プレスリリース