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睡眠薬処方量が4割減-愛知県小牧市の診療所、薬剤師の診察前面談で適正化

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2018年07月02日 AM10:00


■業務フロー、PBPMで構築

薬剤師が医師の診察前に不眠を訴える患者に面談して詳しく話を聞き、適切な睡眠習慣を指導したり、睡眠薬の適正使用を医師に提案したりすることによって睡眠薬の処方量は大幅に減少することが、愛知県小牧市にある診療所「平松内科・呼吸器内科小牧ぜんそく睡眠リハビリクリニック」の5年間にわたる研究で明らかになった。医師と薬剤師の「プロトコールに基づく薬物治療管理」(PBPM)を導入し、業務フローや薬剤師の担当業務を明文化して関わってきた。診療所で働く薬剤師の新たな業務モデルとしても注目を集めそうだ。

同クリニックに勤務する薬剤師の伊藤光氏は、医師の診察前、不眠を訴える患者や睡眠薬を常用している全ての患者に面談する。初診の場合、不眠症なのか、無呼吸症候群の疑いはないかなど睡眠障害の要因や背景を評価。睡眠薬の要・不要を判断する。薬物治療は補助的な対処療法と位置づけ、患者の話をよく聞いた上で個々に応じた適切な睡眠習慣を指導し、睡眠薬の新規処方抑制に取り組んでいる。必要な場合でも不眠のタイプに応じた最適の睡眠薬を選択し、医師に提案する。

既に睡眠薬を服用している患者では可能な場合、同意を得て減薬に取り組む。患者の睡眠日誌をチェックし、薬の効果や副作用をモニタリングしつつ生活指導や認知行動療法を実施。その上で医師に減薬を提案する。

伊藤氏は面談時に把握した様々な情報を電子カルテに記入。医師への提案として睡眠薬の処方オーダを入力する。医師はその情報を踏まえて診察し、病名や治療法、薬物療法を最終的に決定する。こうした業務フローや役割分担をPBPMで定めて取り組んできた。

その成果を把握するため、2013年1月から17年12月までの5年間に処方された睡眠薬の処方量を年ごとに集計したところ、受診患者数は段階的に増加する一方、睡眠薬の処方量は右肩下がりに減少。17年の処方量は13年に比べて41.6%減っていた。薬剤師が診察前に情報収集した上で睡眠衛生指導などの非薬物療法を行うことにより、睡眠薬の新規処方を回避できたという。

長期使用による依存が社会的な問題になっているベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方量も年を追うごとに減少。17年の処方量は、13年に比べて65.8%減っていた。同薬の減量や削減、適切な睡眠薬への切り替えは、時間をかけて行う必要がある。5年間の取り組みが具体的な結果となって現れてきた格好だ。

同診療所は、小牧市民病院呼吸器科部長を務めていた医師、平松哲夫氏が独立して開業。同院の病棟担当薬剤師としてチーム医療に関わっていた伊藤氏が立ち上げに参画した。

不眠患者だけでなく喘息患者の診察前に面談する機会も多い。初診時には患者基本情報を収集し、再診時には症状や副作用の状況を把握して医師に伝えるほか、処方提案を行うこともある。吸入器具の操作方法や息の吸い方、薬物療法の意義などを患者に説明する役割も担っている。

伊藤氏の業務の中心は、患者との面談と医師への情報伝達だ。同診療所は院外処方箋を発行しているため、調剤は行わない。診療所におけるチーム医療のモデルとしても意義の大きい取り組みだ。

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