厚生労働省の「国立高度専門医療研究センター(NC)の今後のあり方検討会」は6月29日、NC6機関の役割をまとめた素案について議論を行った。世界最高水準の医療を実現し、地球規模の課題や時代の変化に対応していくことを普遍的な役割に位置づけ、研究開発については、ナショナルレジストリの共有など基盤的研究を中心課題に取り組んでいくことを明記。委員からは「NCならではの機能を明確にすべき」などと意見が相次いだ。年内メドに報告書をまとめる予定。
素案では、これまでのNCの基本的な考え方は今後も維持するとしつつ、国立がん研究センターなど6NCの具体的な取り組みについては、世界最高水準の医療を実現し、地球規模の課題や時代の変化に対応していく視点で取り組む役割を位置づけた。
研究開発成果の最大化に向けては、ナショナルレジストリの構築やクリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)の活用、強化を一層促進すべきと明記。特に大学など他の研究機関で十分な取り組みが確保できない分野として、▽全国民規模のナショナルレジストリの構築とNC間の共有▽難治性・希少性疾患や市場規模の小さい疾患分野、開発リスクの高い新規市場分野を中心とした医薬品等の研究開発――などの基盤的研究を中心的な課題と位置づけて取り組んでいく方向性を示した。
これらの取り組みを進めるため、データ共有の情報連携・拠点化に向けた検討や産学連携ネットワークの強化、研究プロジェクトの企画から進捗管理、成果活用まで一貫して行うリサーチ・アドミニストレーターの育成に向けた検討が必要とした。
医療提供については、高度専門医療を提供すること、各専門領域の全国の診療水準を向上させる二つの役割を担っていくべきと明記。高齢化に伴い、合併症を持つ患者が増えていることなど時代の変化を踏まえた病院機能のあり方を考える必要性を挙げた。
素案について、花井十伍委員(NPOネットワーク医療と人権理事)は「国民から見ると、医療提供の部分について国立病院機構との違いが分からない。ナショナルセンターならではの機能を明確に記載した方がいい。レジストリの統合や標準化など、これだけはやるべきという役割を書かないとあまり変わり映えがしないのでは」と指摘した。