薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会は26日、「タクロリムス水和物」など免疫抑制剤3品目の添付文書を改訂することを了承した。胎児の先天奇形などを引き起こす恐れから、現在は妊婦と妊娠している可能性のある女性に対する投与を禁じているが、海外の疫学研究では先天奇形の発生率が上昇した報告がないことなどを踏まえ、禁忌を解除する。厚生労働省は、製造販売業者に改訂を指示する通知を速やかに発出する予定だ。
今回の改訂の対象は、免疫抑制剤のタクロリムス水和物、シクロスポリン、アザチオプリンの3品目。妊婦、妊娠している可能性のある女性に対する禁忌を削除するほか、使用上の注意の「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項において、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与するとした注意喚起を記載する。
現在、これら免疫抑制剤の添付文書では、臓器移植後の妊婦に投与した場合、早産や先天奇形などを引き起こす可能性があることから、妊婦、妊娠している可能性がある女性への投与を禁じている。
ただ、国立成育医療研究センター内の「妊娠と薬情報センター」に3品目の投与に関する相談が2005年以降に295件寄せられるなど、臓器移植患者の妊娠中における治療継続が課題となっていた。こうした状況を踏まえ、同センター内に専門家のワーキンググループを設け、添付文書の見直しを進めていた。
その結果、海外の疫学研究では免疫抑制剤を投与された妊婦において胎児の先天奇形の発生率が上昇したという報告がないこと、欧米など6カ国の添付文書では妊婦への投与を基本的に禁忌としておらず、潜在的有益性が胎児への潜在的危険性を上回る場合にのみ投与可能としていることなどから、添付文書を改訂することが適当と判断した。
調査会の結論を受け、厚労省は製造販売業者に添付文書改訂を指示する通知を速やかに発出する予定。