厚生労働省は、注射用抗癌剤を安全に複数回使用するための指針をまとめ、全国の医療機関に周知するよう都道府県に通知した。安全性、安定性の確保や調製上の過誤防止に注意し、複数回使用は高額薬剤に限るなど、各施設で事前に対象薬剤を検討した上で実施するよう求めた。原則として同じバイアル製剤の使用は2回まで。清浄度クラスが高い環境で保管し、当日内に使用することとした。正式に指針が通知されたことで高額な抗癌剤など余った残薬を廃棄せず、有効活用できるようになる。
通知では、抗癌剤などを複数回使用する場合、細菌混入のリスクなど微生物学的な安全性、品質の安定性を確保し、薬剤の取り違えや調製上の過誤防止に最大限注意するよう求めている。また、こうした医療安全上のリスクを踏まえ、複数回使用は高額薬剤を使用する場合に限るなど、各施設で事前に対象薬剤を十分に検討した上で実施するよう促した。
安全に複数回使用するための調製環境としては、清浄度の高い無菌室に設置された安全キャビネットの使用が望ましいとし、調製に当たっては閉鎖式薬物移送システム(CSTD)の使用を推奨した。
針を刺した後のバイアルは、ゴム栓やCSTDの接続部分を消毒し、滅菌シールで保護した上で保管することを求め、同じバイアル製剤の複数回使用は2回までとし、最初に針刺しした当日内に使用することを推奨している。
高額な抗癌剤の余った残薬が700億円以上も廃棄されている現状を問題視した自民党の行政改革推進本部の指摘を受け、厚労省は有効活用に向けて安全な複数回使用のあり方を検討してきた。既に一つのバイアルを2人に調製する複数回使用を行った場合の保険請求については、やむを得ず廃棄した場合を除き使用量で請求することが通知されている。
今回、原則として複数回使用は2回まで、当日内に使い回す留意点を示した安全指針がまとまったことで、抗癌剤の有効活用と廃棄減につながることが期待される。