IL-5産生-病原性記憶T細胞がアレルギー疾患の発症に関与
千葉大学は6月25日、重症アレルギー疾患における組織線維化を誘導する新たな細胞集団を同定し、組織線維化の新規メカニズムを明らかにしたことを発表した。この研究は、同大大学院医学研究院の森本侑樹特任助教、平原潔准教授、中山俊憲教授らのグループが、同大学医学研究院の耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学岡本美孝教授のグループと共同で行ったもの。研究成果は「Immunity」に掲載されている。
画像はリリースより
ぜんそくなどのアレルギー疾患の治療には現在、吸入ステロイドによる対症療法が一般的だが、一度起きてしまった組織の線維化に対しては、ステロイドは無効であり、新たな治療法が求められている。
これまでの研究から、ぜんそくなどの慢性化・重症化には、ハウスダストや花粉などの原因物質に反応し、免疫記憶能をもつ「病原性T細胞」が深く関わっていることがわかってきた。なかでも、さまざまな慢性アレルギー性疾患において、好酸球を誘導するサイトカインである「IL-5」を多量に産生する病原性記憶T細胞が多く存在することが報告されており、IL-5産生-病原性記憶T細胞が好酸球浸潤を伴うアレルギー疾患の発症に関与していることがわかってきた。
EGF受容体阻害薬が新たな治療薬となる可能性
研究グループは、「Amphiregulin」(アンフィレグリン)というタンパク質を特異的に産生する病原性記憶T細胞を同定し、このAmphiregulinが上皮成長因子(EGF)受容体を介して好酸球に作用し、炎症性好酸球を誘導することを発見。炎症性好酸球が、細胞外基質である「Osteopontin」(オステオポンチン)を多量に産生し、組織の線維化を直接誘導することを見出した。
また、線維化を引き起こしたマウスへEGF受容体阻害薬を投与したところ、組織の線維化が改善することがわかった。さらに、難治性炎症疾患である好酸球性慢性副鼻腔炎(ECRS)患者の鼻ポリープ中にAmphiregulin産生病原性記憶T細胞およびOsteopontin産生好酸球を多数確認。同記憶型病原性T細胞がヒト好酸球性疾患の線維化を誘導する可能性があることが示されたという。
今回の研究成果は、これまで根治的な治療方法のなかった難治性の呼吸器疾患に対する新たな治療法となる可能性がある。EGF受容体阻害薬は、すでに肺がんの治療薬として一般に広く使用されていることから、研究グループは、「ドラッグ・リポジショニングの可能性を検討していく」と述べている。
▼関連リンク
・千葉大学 プレスリリース