時間軸を持つ情報を得ることが困難な従来の解析法
東京大学医科学研究所と日本医療研究開発機構(AMED)は6月22日、インフルエンザウイルスに感染したマウスの肺を、生体イメージング法を用いて生きたまま観察することに成功したと発表した。この研究は、同研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡義裕教授らの研究グループと米ウィスコンシン大学が共同で行ったもの。研究成果は、米科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」のオンライン速報版で公開されている。
画像はリリースより
インフルエンザは、時として致死性の肺組織障害を引き起こすため、医学・獣医学・公衆衛生上の対策が必須な呼吸器感染症。インフルエンザウイルスに感染した肺では、免疫系の活性化をはじめ、さまざまな宿主応答が誘導されると考えられているが、従来の固定標本などを用いた解析では、細胞の動きや血液の流れなどの時間軸を持った情報を得ることができなかった。
免疫細胞の動きや血液の流れなど変化の観測・定量化が可能に
今回の研究では、2光子励起顕微鏡を用いた生体イメージングシステムを構築することで、インフルエンザウイルスに感染したマウスの肺における免疫細胞の動きや血液の流れをタイムラプス像として撮影することに成功。血流速度、血管透過性の変化、免疫細胞の移動速度などの観測、および、新たな病態生理学的なパラメーターとしての定量化解析を行うことができた。さらに、このイメージングシステムをバイオセーフティーレベル3 (BSL3) の施設に設置することで、季節性ヒトインフルエンザウイルス(H1N1)のみならず 高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)に感染した動物の観察が可能となり、病原性の異なるウイルス株を比較解析することができたという。
この研究で確立したインフルエンザウイルス感染肺の生体イメージングシステムは、他の肺疾患の解析にも応用が可能であり、さまざまな呼吸器疾患の病態解明にも役立つことが期待される、と研究グループは述べている。
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・東京大学医科学研究所 プレスリリース