日本国内ではATL以外のT細胞リンパ腫で承認
名古屋市立大学は6月22日、成人T細胞白血病(ATL)に対する抗CCR4抗体薬「ポテリジオ(R)」(一般名:モガムリズマブ)の治療効果を予測する遺伝子異常を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の稲垣宏教授、坂本祐真大学院生、岩手医科大学医学部の石田高司教授、今村総合病院の宇都宮與名誉院長兼臨床研究センター長らとの共同研究によるもの。研究成果は米科学雑誌「Blood」に掲載された。
画像はリリースより
ATLは、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)という名のウイルスによって引き起こされる、治療が困難なT細胞白血病/リンパ腫。モガムリズマブは、白血病/リンパ腫細胞に発現するCCR4タンパクに対する抗体治療薬で、名古屋市立大学グループ、今村総合病院と協和発酵キリン株式会社が2001年より共同研究を開始し、その成果として、日本において、ATL以外のT細胞リンパ腫の適応で承認されている。また、欧米で実施された大規模治験で皮膚T細胞リンパ腫に高い治療効果を示し、2017年にはFDAによりBreakthrough Therapy(画期的治療)に指定されている。
5年後の生存率、CCR4遺伝子変異の有無で73%vs26%
研究グループは、多数のATL患者で白血病細胞を解析。その結果、33%の患者にCCR4遺伝子変異(異常)を認めたという。また、モガムリズマブを含む治療を受け、かつ造血幹細胞移植治療を受けずに治療を終えたATL患者を解析したところ、CCR4遺伝子異常を有する患者の治療開始5年後の生存率は73%、CCR4遺伝子異常を有さない患者では26%だった。
これらの結果から、CCR4遺伝子異常を有するATL患者は、CCR4遺伝子異常を有さないATL患者に比較し、モガムリズマブの治療反応性が極めて良好であること、CCR4遺伝子異常を有するATL患者は、治療効果は高い反面、副作用が強い造血幹細胞移植治療を受けずとも、モガムリズマブ治療によって、長期間にわたり白血病を抑え込める可能性が高いことが明らかとなった。
今回の研究成果について、研究グループは、「ATL以外のさまざまなT細胞白血病/リンパ腫に(モガムリズマブが)適応される可能性がある」と述べている。
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・名古屋市立大学 報道発表