細胞のがん化や遺伝病の原因につながる染色体複製の間違い
九州大学は6月21日、DNAの複製の間違いを防ぐミスマッチ修復機構がヒストンからDNAをほどくことを発見と発表した。この研究は、同大大学院理学研究院の高橋達郎准教授、照井利輝研究員(元日本学術振興会特別研究員DC1)、大阪大学大学院理学研究科の升方久夫教授(現:名誉教授/招へい研究員)、小布施力史教授、長尾恒治准教授、中川拓郎准教授、高知工科大学環境理工学群の田中誠司教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米科学専門誌「Genes&Development」のオンライン確定版に掲載されている。
画像はリリースより
染色体DNAの複製の間違いは、遺伝子の突然変異を引き起こし、細胞のがん化や遺伝病の原因ともなる。生物はミスマッチ修復と呼ばれる複製の間違いを修正するための防御システムを持ち、間違いが生じるとミスマッチ修復に関わるタンパク質がDNA上に集まり、間違いを含むDNAを削り取って情報を修復する。
ヒトを含む真核生物では、DNAはヒストンというタンパク質に密に巻き取られて保存されている。一方、ヒストンに巻き取られたDNAに対してミスマッチ修復タンパク質がどうやってアクセスし、どのようにしてDNAの情報を直すのかは不明だった。
抗がん剤の効果に大きく影響するミスマッチ修復機構
研究グループは、ミスマッチ修復機構がヒストンからDNAをほどくことを発見。さらに、Smarcad1という因子がこの過程を助けることも明らかになったという。今回の研究によって、DNAを巻き取って収納する反応と複製の誤りを修復する反応がどのように両立しているのかが、初めて解明されたとしている。
近年では、ミスマッチ修復機構がある種の抗がん剤による治療効果に大きく影響することもわかってきた。今回の発見について、研究グループは「遺伝情報を安定に維持するための基本的なメカニズムを解き明かすだけでなく、ミスマッチ修復の欠損によって生じるがんの研究など、医学的に重要な研究にも役立つことが期待される」と述べている。
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・九州大学 研究成果