■即日配送の浸透も背景か
一般用医薬品の購入経路を調べたところ、インターネット販売で購入したことのある国民は5.7%だったことが、厚生労働省研究班「国民への安全な医薬品の流通、販売・授与の実態等に関する調査研究」(代表:今井博久東京大学大学院医学系研究科教授)の調査で明らかになった。3年前の調査時から1.9ポイント増加しており、即日配送の浸透、曜日や時間を問わず購入できる利便性の高まりから、ネット購入は着実に拡大していることが考えられた。一方、店舗で薬剤師だけが販売できる要指導医薬品について、依然として数品目しか揃えていない保険薬局が約9割に上る実態も判明した。
調査は、一般薬のネット販売が解禁されて約3年が経過した現在、国民が医薬品をどのようなルールで購入しているか等の実態を把握する目的で実施されたもの。ネット利用頻度によるバイアスを回避するため、全国の住民基本台帳を用いて、都市部と郊外部の市町村から無作為抽出した20歳以上の5000人を対象に、自記式調査票を用いた郵送法で実施した。有効回収率は42.6%だった。
その結果、一般薬をネット販売で購入している人は全体の5.7%と、前回調査の3.8%から1.9ポイント増加した。ネットで一般薬を購入した理由を尋ねたところ、「曜日や時間を問わず購入できるから」との回答が53.3%と最も多く、次いで「検索して比較検討しながら購入できるから」が44.6%、「配達してくれるので時間を節約できるから」が42.4%となった。購入者はネット販売に利便性を求めている結果で、一般薬のネット購入は3年前と比べて着実に広がっていることが明らかになった。
これに対し、店舗で一般薬を購入した理由を尋ねると、「使いたいときに買ってすぐに使用できるから」が73.7%と最も多く、次いで「手に取って選択できるから」が64.2%となった。
薬の飲み方や副作用の説明の有無を聞いたところ、要指導医薬品については、薬局やドラッグストアなどの店舗では「よく聞いた」と「だいたい聞いた」を合わせて68.9%、第1類医薬品は54.6%、第2類医薬品は34.2%、第3類医薬品では28.2%にとどまった。
これに対し、ネット販売時の電子メールによる説明に関して、第1類薬では「よく聞いた」と「だいたい聞いた」を合わせて33.3%と低かった。説明を聞いたのは、店舗ではいずれの医薬品でも薬剤師が最も多く、ネットでは「区別がつかなかった」「覚えていない」との回答が多かった。これらの説明を理解できないと回答した割合は、店舗では2.0~4.6%だったのに対し、ネット販売では15.0~20.8%と差が見られ、電子メールでの説明に気づかなかったり、読んでいない可能性が考えられた。
また、副作用があったとの回答は5.4%だった。副作用が起こったときの対応では、「医師にかかった」が53.8%、「店舗を訪れて相談した」が38.5%で、そのほか、自己判断で服用を中止している例も多く見られた。
一方、保険薬局における一般薬の取り扱い状況についても調査した。日本薬剤師会の全国8県支部に協力を依頼し、各県ごとに無作為抽出した50薬局を対象に実施したもの。同じ質問項目でドラッグストアにも調査を行った。回答薬局数は173件、ドラッグストアは99件。
その結果、要指導薬について、ドラッグストアでは45.9%、薬局では39.1%しか販売していなかった。何種類の薬効群の医薬品を取り扱っているかを尋ねたところでは、全ての薬効群の品目を販売している薬局は4.0%、ドラッグストアでも4.3%に過ぎなかった。ほとんどの薬効群の品目を販売している薬局は4.0%だったのに対し、ドラッグストアは35.5%が取り扱っていた。薬局では、少しの薬効群の品目、取り扱いなしを合わせて要指導薬を数品目しか販売していないところが86.6%と約9割を占め、3年前の前回調査と状況は変わっていなかった。