■これまでにない変化の兆し
日本薬剤師会は21日の定例会見で、2017年度保険調剤の動向(速報値)を発表した。処方箋受取率は全国平均72.8%で、16年度より1.1ポイント増加。50%を下回っていた福井県が50.8%に達し、全ての県が50%を上回った。一方、薬局を訪れた患者数を示す「調剤件数」が1.4%増(16年度2.3%増)、薬局が受け取った「処方箋枚数」は0.6%増(1.4%増)といずれも伸びが鈍化したほか、処方箋枚数が17県で前年度を下回った。石井甲一副会長は、「これまで、いけいけだった医薬分業がそろそろ頭打ちになってきた」と分析し、「これまでにない変化だった」との見方を示した。
■17年保険調剤の動向 日薬
処方箋受取率は、全国平均で前年を上回り、全ての都道府県でプラスに転じた。ただ、調剤件数は6億4514万3999件で、対前年度比101.4%の伸びを示したが、16年度が102.3%だったため、石井氏は「伸びが小さくなっている」と説明。
処方箋枚数は8億0385万5677枚となり、8億枚を突破したものの、対前年度比が100.6%で、16年度の101.4%の伸びを下回ったため、石井氏は「処方箋枚数もほとんど伸びなくなってきているといえる」とした。
調剤点数(料)は、7兆2907億7314万円で101.7%の伸びを示したが、15年度に高額なC型肝炎治療薬の使用がピークに達し、投与患者数の減少で対前年度比97.1%と大幅なマイナスとなった16年度から「復活した程度」(石井氏)だという。
石井氏は、「全体を通すと、処方箋枚数が8億枚を超え、調剤点数が7.3兆円規模になったものの、伸びが全体としてフラットになった。そんな兆しがいよいよ見え始めた」と分析した。
都道府県別の調剤件数を見ると、秋田、山形、新潟、福井の4県が前年度を下回った。処方箋枚数が下回ったのは、4県に加え、北海道、青森、宮城、福島、富山、鳥取、広島、山口、高知、福岡、佐賀、長崎、宮崎の17県。調剤点数は、鳥取、山口、佐賀の3県が前年度を下回った。
石井氏は、「医薬分業がそろそろ頭打ちの県が出てきたということ」とし、マイナスの要因について、「都道府県ごとの詳細な解析が必要」としつつも、「高齢化のピークが過ぎ、人口が減っているため、件数、処方箋枚数の減が目立ち始めたのでは」と推測。「これまでにない変化があった年だった」との印象を語った。
■日薬との16年振り返る‐石井副会長
7月から日本薬剤師連盟の活動に専念する石井氏にとって、日薬の執行部として参加する定例会見はこの日が最後となった。
石井氏は、専務理事として8年、副会長として4年の計12年のほか、藤井基之参院議員の政策秘書として、日薬連盟とのパイプ役を担ってきた4年間を合わせた「トータル16年」を振り返り、「結構な時間、薬剤師関係の仕事に携わることができた」との想いを語った。
ただ、副会長を務めた4年間で、調剤バッシングが厳しさを増したことは「大変だった」とも述べ、18年度診療報酬改定は「何とか面目は保ったが、2年後はさらに厳しくなる」と見通した。
それでも、「全く日薬と関係がなくなるわけではない」ことから、今後は、「日薬連盟副会長」という立場で「政治活動を通して裏から支えたい」とした。