健康維持に貢献している腸内細菌叢のさらなる解明へ
慶應義塾大学先端生命科学研究所と神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)、森下仁丹株式会社は6月21日、難培養性腸内細菌培養技術の開発に向けた共同研究契約を締結したと発表した。
腸内細菌の中には、培養が難しいために研究が進んでいないさまざまな菌が存在する。メタゲノム解析やメタボローム解析技術を駆使した近年の研究により、腸内細菌叢はヒトの健康維持・増進に大きく貢献していることがわかってきた。また、そのバランスが崩れるとさまざまな疾患の発症に繋がることが報告されている。しかし、まだその機能や存在意義が不明な菌も多く、とくに培養が困難な「難培養性腸内細菌」については、研究が進んでいないため、どのような働きを担っているかわかっていない。
新たな機能性食品の開発推進などに期待
慶大先端生命科学研究所の福田真嗣特任准教授は、KISTEC腸内環境制御グループの中藤学サブリーダーと連携し、ヒト腸内細菌の安定的培養技術の確立や腸内細菌の新規単離培養技術の開発に取り組んでいる。また、森下仁丹は胃酸に阻害されず微生物を腸まで届ける耐酸性シームレスカプセルの開発をはじめ、カプセル内で微生物の培養を可能にする半透膜皮膜のバイオシームレスカプセルなど、皮膜にさまざまな機能を付加する特殊技術を確立し、ヒト腸内細菌に有用な製品の開発に取り組んできた。今回の共同研究では、三者が有する独自技術やノウハウを融合させることで、難培養性腸内細菌の新規培養技術の開発を目指すという。
この共同研究の実施による難培養性腸内細菌の新規培養技術の開発は、メタゲノム解析やメタボローム解析などにより得られた腸内細菌叢全体のカタログデータの中から、個々の腸内細菌の機能を深く知り、腸内細菌叢の制御に繋げることになる。この技術の確立は、新たな機能性食品の開発を推進するとともに、創薬の研究開発にも幅広く活用できることが期待されるとしている。
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