妊娠中の薬剤使用に対する過剰なリスク認識が問題に
国立成育医療研究センターの妊娠と薬情報センターは6月15日、妊娠中の女性に薬剤使用による児への影響など適切な医療情報を提供することが、不必要な人工妊娠中絶・妊娠中の不安払しょくに貢献するとの研究報告を発表した。研究成果は、学術誌「Reproductive Toxicology」に発表された。
画像はリリースより
妊娠中の女性および胎児の薬剤曝露について、一般的に妊婦は非常に心配しがちである。必要な治療の中止や妊娠継続の中断につながる可能性があるため、妊娠中の薬剤使用における過剰なリスク認識は問題であった。そこで同センターは、妊娠中の薬剤曝露による児の先天異常のリスク認識の現状を把握すること、そして、適切な医療情報を提供し妊婦の不安を払しょくするカウンセリングの有用性を明らかにすることを目的として研究を行った。
カウンセリング後に妊娠継続意向が上昇
成育センターは今回、対面カウンセリングの前後に、妊婦の妊娠中の薬剤曝露による児の先天異常の発生リスクおよび妊娠継続の意思をVisual Analogue scale(VAS)で取得。実際の妊娠継続率については、妊娠転帰ハガキを分娩予定日1か月後に送付し、取得した。
その結果、本研究の対象となった681人の妊婦のうち、児に先天異常が起こるリスク認識の中央値は、カウンセリング前は33.0%(四分位範囲16.0-50.0%)、カウンセリング後は5.0%(同2.0-11.0%)であった(P<0.01)。カウンセリング後、妊娠を継続する意思の中央値は86.0%から100.0%に有意に増加(P<0.01)。また、実際の調査では、ほとんどの対象妊婦(97.1%)が妊娠を継続していることが明らかになったという。
今回の調査により、カウンセリングを通じた適切な医療情報の提供と不安の払しょくの有用性が明らかとなった。今後、同センターは、妊婦・ 胎児に対する服薬の影響に関する相談・情報収集を継続し、全国にある拠点病院を通じた双方向の情報提供をもって、女性が安心して妊娠・出産のできる社会づくりに貢献していくとしている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース