閉経後女性のメタボ増加に関する分子メカニズムを研究
東北大学と東京医科歯科大学は6月15日、ポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンを豊富に含むブドウ種子エキスが、閉経女性のモデルである卵巣摘出マウスにおいて、腸内フローラを改善し、肥満や糖尿病を予防・改善する効果を発揮することを見出したと発表した。この研究は、東北大大学院歯学研究科先端フリーラジカル制御学共同研究講座の菅野太郎教授、東北大名誉教授であり東京医歯大大学院医歯学総合研究科整形外傷外科治療開発学の庭野吉己寄附講座教授と、同整形外傷外科治療開発学の麻生義則寄附講座准教授の研究グループによるもの。研究成果は、国内科学誌「Journal of Medical and Dental Sciences」と米科学誌「Journal of Food Science」にそれぞれ掲載されている。
画像はリリースより
近年、腸内細菌が、食物の消化活動のみならず、さまざまな疾患の原因となることが明らにされてきた。たとえば腸内細菌叢は脂質吸収を制御し、肥満者の腸内細菌を移植されたマウスは痩身者の腸内細菌を移植されたマウスよりも有意に太る。ファーミキューテス門に属する腸内細菌は、いわゆる「デブ菌」と呼ばれ、腸内細菌叢におけるファーミキューテス門比率の増加は、脂肪吸収効率を増加させて肥満を招く。
閉経は、肥満や耐糖能低下の危険因子である。閉経後女性の腹囲は増加し、内臓脂肪の増加に伴い耐糖能低下が認められ、メタボリックシンドロームの罹患率が増加するが、この現象の背景にある分子メカニズムは十分に解明されていなかった。
ブドウ種子エキスで内臓脂肪、皮下脂肪の蓄積が共に抑制
研究チームは、閉経のモデル動物である卵巣摘出マウスの腸内細菌叢を解析。その結果、「デブ菌」ファーミキューテス門に属する細菌が腸内に増加し、痩せ型の人に多く存在するバクテロイデーテス門に属する細菌が減少することを見出した。
このモデル動物は、内臓脂肪、皮下脂肪の蓄積による肥満に至り、血糖値が上昇したが、ブドウ種子エキスを連日摂取させたところ、ファーミキューテス門細菌の増加とバクテロイデーテス門細菌の減少が抑制され、肥満指数とよばれるファーミキューテス門/バクテロイデーテス門比(F/B比)が改善。これに伴い、内臓脂肪、皮下脂肪の蓄積が共に抑制されたという。また、内臓脂肪の蓄積は血糖値上昇の原因となるが、ブドウ種子エキスの投与により、糖負荷試験時の血糖値も改善された。一方、ブドウ種子エキス投与による、餌の摂取量、筋肉重量や内臓重量への影響は認められなかったという。
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