肝臓に伝播される波の速度をMRIで検出し、肝硬度を測定
福島県立医科大学は6月12日、低侵襲なMRエラストグラフィーによって測定された肝硬度が、肝切除術後合併症の発生予測に有用であることを世界で初めて報告する研究結果を発表した。この研究は、同大医学部肝胆膵・移植外科講座の佐藤直哉助教、丸橋繁教授、消化器内科学講座の大平弘正教授らによるもの。研究成果は、英科学誌「British Journal of Surgery」に掲載された。
画像はリリースより
慢性肝炎により肝線維を来した患者への肝切除は、正常な肝臓の患者と比較して、術後合併症の頻度が高いことが知られている。しかし、肝線維化診断には侵襲的な肝生検が必要となるため、術前に十分な評価をすることができなかった。
近年開発されたMRエラストグラフィーは、肝臓に伝播される波の速度をMRIで検出するという原理で、肝硬度を測定する。福島県立医科大学では2013年より、全国に先駆けてMRIを用いたエラストグラフィーを導入し、肝線維化診断に使用してきた。この技術によって、体に負担のない肝線維化診断が可能となり、術前肝予備能評価に「肝線維化」という新たな指標を加えることができたという。
肝硬度とアルブミン値で、合併症の発生を効率的に予測
今回、研究グループは、MRエラストグラフィーで測定された肝硬度が肝切除術後合併症の発生予測に有用かどうかを検討した。肝切除を受ける患者を対象にMRエラストグラフィーによる肝硬度を測定し、肝切除術後合併症の発生を観察。その結果、肝線維化を有する患者群では難治性腹水や胸水貯留などの合併症が多く発生することが示され、肝硬度とアルブミン値を組み合わせることで、肝切除術後合併症の発生を効率的に予測できることが明らかになったという。
研究グループは、「肝線維化に基づいた肝切除リスクを術前に理解することで、肝線維化により門脈圧が亢進した患者に適した術式選択や周術期管理を実践し、手術成績の向上に寄与できるものと考えられる」と述べている。
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