血栓除去作用の増強と、血栓部位での炎症抑制作用を持つ
株式会社ティムスは6月11日、急性期脳梗塞患者を対象とした前期第2相臨床試験を実施中の開発品TMS-007注射剤の導出に関するオプション契約を、米Biogen(バイオジェン)と締結したと発表した。これまでのTMS-007の研究開発は、東京農工大学、昭和大学および東北大学との共同研究を通じて行われており、また科学技術振興機構(JST)および新エネルギー・産業技術総合開発機構の支援を受けている。
TMS-007 は、カビの一種「スタキボトリス・ミクロスポラ」が産生する化合物群「SMTP」に属する新規低分子化合物のひとつ。その血栓除去作用は、プラスミノーゲンのコンフォメーション(立体構造)変化に基づく、プラスミノーゲンのフィブリンへの結合とプラスミンへの活性化の促進に基づいている。これにより血栓が存在する局所において血栓溶解が促進され、出血リスクの少ない血栓溶解が可能になると期待されている。また、可溶エポキシドハイドロラーゼを阻害することで得られる強い抗炎症作用は、虚血再灌流により引き起こされる血管障害を緩和する機能を持つと考えられている。
この独特な作用メカニズムにより、急性期脳梗塞治療の有力な薬剤治療薬となること、また既存の薬剤では発症4.5時間以内に制限されている治療可能時間を大きく延長することで、より多くの患者の治療に資することが期待されている。
発症から12時間までの急性期脳梗塞患者を対象にP2試験を実施中
現在、発症から12時間までの急性期脳梗塞患者に対する同剤の安全性と有効性を検討する ことを目的として、東北大学病院などにおいて、二重盲検・無作為化試験デザイン下での前期第2相臨床試験(2018年2月開始)を実施中(被験者総数60~90名)。この前期第2相臨床試験に先立ち、東京大学医学部附属病院にて健常人を対象とした第1相臨床試験を実施し(2015年8月完了)、安全性を確認している。
なお、今回の契約のもと、ティムスは一時金400万ドル、バイオジェンがオプション権を行使した場合はオプション行使料1800万ドル、開発状況および販売状況に応じて最大3億 3500万ドルの一時金と、売上に応じた段階的ロイヤリティを受領することができるとしている。
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・株式会社ティムス ニュースリリース