厚労省は、会議で提示した資料の中で、薬機法で虚偽・誇大広告に違反した場合の罰金の水準は、最高でも200万円(個人、法人共に)以下と少額なため、国会で「違法行為によって不当な利益を得た企業に対しては、その収益を取り上げるべき」との指摘があったことを紹介。欧米では、罰金や制裁金によって、違法行為で得られた経済的利得を徴収する仕組みがあることも示した。
その上で、薬機法における経済的利得の確保を目的とした違法行為を抑止するための措置について、「どう考えるか」を検討課題として挙げた。
法律の専門家である山本隆司委員(東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、経済的利得を返還する仕組みとして、課徴金制度を挙げた。行政処分である課徴金制度は、起訴や裁判が必要になり、手続きが煩雑な罰金に比べて実施しやすく、「利益の何%」を課徴金とすることも可能になるため、「実効性があるのではないか」と指摘した。
中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「違法なデータをねつ造し、売上を伸ばした場合、不当利得を社会に還元する仕組みをぜひ考えてもらいたい」と要望。さらに、回収された売上金の一部について、「国庫ではなく医療費にもどす」仕組みにすることを提案した。
花井十伍委員(NPO法人ネットワーク医療と人権理事)は、化学及血清療法研究所のワクチン不正製造の事例を引き合いに、「ペナルティとして業務停止をしても患者に必要な薬は止められない」ため、業務停止が抑止力にならない点を指摘し、「罰金という形にしてほしい」と要望した。
■「三役」責務を明確化
製造販売「三役」については、許可業者の役員による適切な監視・監督やガバナンス体制を強化するため、厚労省が総括製造販売責任者の従事経験などの資格要件を法令上、規定する必要を指摘。
現行のGQP省令、GVP省令で規定されている、品質保証責任者と安全管理責任者の配置を法律上に規定し、総括製造販売責任者との関係性を追記すると共に、それぞれの責務を明確化する必要性も示した。
中川氏は、薬剤師が務める総括責任者が、ポストとしては品質・安全責任者の上に位置しているにもかかわらず、要件が「3年の従事経験」であるため、「これではガバナンスが発揮できない」と問題視。
加茂谷佳明委員(塩野義製薬上席執行役員)は、日本製薬団体連合会のアンケート調査で、役員や部長職のポストに就いていない総括責任者が29%に上ったことを説明し、「十分に高い位置にいることが重要」との考えを示した。
この日の会議では、厚労省が今秋の発出をメドに作業を進めている、MRの活動や製薬企業等が行う情報提供に関するガイドラインについて、花井氏が「ガイドラインでは生ぬるい」と指摘し、事前にMRが提供できる情報や資材の範囲を「レギュレーションしてもらいたい」と要望。
これに対し、監視指導・麻薬対策課の磯部総一郎課長は、「まずはガイドラインを作成し、その後の状況を見て、検討させてもらいたい」と応じた。