次世代経口AD治療剤として開発中のBACE阻害剤
エーザイ株式会社と米バイオジェン・インクは6月5日、経口βサイト切断酵素(BACE)阻害剤elenbecestat(開発コード:E2609)について、米国で実施した臨床第2相試験(202試験)で、安全性と良好な忍容性を示すとともに、アミロイドPETによる脳内アミロイドベータ(Aβ)レベルが統計学的に有意な減少を示したと発表した。
Elenbecestatは、次世代経口アルツハイマー病(AD)治療剤として開発しているエーザイ創製のBACE阻害剤。BACEは、アミロイド前駆体タンパク質のβサイトを切断するAβ産生の律速酵素だ。ElenbecestatはBACEを阻害することで、Aβの総量を低下させ、ADの進行を抑制する疾患修飾作用が期待されている。現在、ADに伴う軽度認知障害から軽度のAD(総称して早期AD)を対象とした2つのグローバル臨床第3相試験(MISSION AD1/2)が進行中。同剤の米国での開発については、米国食品医薬品局(FDA)のファストトラック指定を受けている。
202試験は、アミロイドPETでAβの脳内蓄積が確認されている、ADに伴う軽度認知障害および軽度から中等度のAD患者を対象とし、18か月間投与のプラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、無作為化臨床第2相試験。70名の患者がelenbecestat(5mg、15mg、50mg/日)、プラセボの合計4投与群に割り付られた。Elenbecestat 5mgおよび15mg投与群の半数以上の患者は投与期間中に50mg投与群に移行した後、3か月以上投与。当初からの50mg投与群と合わせた全50mg投与群(38人)における50mg平均投与期間は約11か月だった。
アミロイドPETによる脳内Aβレベル有意に減少
試験の結果、elenbecestatは、投与18か月時点で、安全性と忍容性の確認で求められるプロファイルを示した。全50mg投与群で、頻度が高かった有害事象の上位6つは、接触性皮膚炎、上気道感染、頭痛、下痢、転倒、皮膚炎。なお、同試験において、肝毒性に繋がる副作用の報告はなかったという。
また今回の試験では、安全性に加え、探索目的として、投与18か月時点におけるアミロイドPETによる脳内Aβの蓄積、および臨床症状に関する有効性を検討。アミロイドPETによる脳内Aβレベルについて、elenbecestat全50mg投与群は、プラセボ投与群と比較して統計学的に有意な減少を示した(経時的アミロイドPETによる評価対象者:35人)。
また、臨床症状に対する有効性については、探索的評価項目のCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)を用いた。CDR-SBにおいて、elenbecestat全50mg投与群は、プラセボ投与群と比較して統計学的に有意ではなかったが、臨床症状評価スケールにおいて、臨床的に重要な変化と考えうる数値的な悪化抑制が観察されたという。
この試験の詳細な結果については今後、学会などで発表する予定だとしている。
▼関連リンク
・エーザイ株式会社 ニュースリリース