UFM1システムの機能低下が遺伝性発達障害の原因に
新潟大学は6月5日、UFM1システムと呼ばれる細胞内タンパク質修飾機構の機能低下が小頭症や精神運動発達遅延などを伴う遺伝性の発達障害を引き起こすことを突き止めたことを発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科分子遺伝学分野の小松雅明教授、石村亮輔助教らの研究グループが、キング・ファイサル専門病院研究センター、ケンブリッジ大学と共同で行ったもの。研究成果は「Brain」に掲載されている。
画像はリリースより
重度発達障害をきたす疾患には未だ原因不明のものが多く、その原因遺伝子の同定と病態発症機序の解明が望まれている。UFM1は細胞内のタンパク質修飾分子で、UFM1はUBA5酵素により活性化された後、UFC1酵素に移され、最終的に細胞内で生合成されたタンパク質を修飾し、タンパク質の機能の変換を担うと考えられている。小松教授らをはじめ、複数のグループにより、独立に小頭症や精神運動発達遅延などを伴う遺伝性発達障害の原因遺伝子としてUBA5が同定され、UFM1システムの機能異常と重度発達障害発症との関連が注目されている。
UFM1・UFC1をコードする遺伝子変異を同定
研究グループは、小頭症や精神運動発達遅延等を伴う遺伝性発達障害患者を持つスーダンの2家系、サウジアラビアの4家系、そしてスイスの1家系の遺伝子解析により、UFM1システムを構成するUFM1およびUFC1をコードする遺伝子に変異を同定。試験管内において、変異UFM1タンパク質はUBA5酵素による活性化、変異UFC1タンパク質はUFM1の転移が著しく抑制されていることが判明した。さらに、患者由来の細胞においてUFM1により修飾された細胞内タンパク質の減少が確認された。以前に同定したUBA5遺伝子変異も同様にUFM1システムを抑制することから、これらの研究成果は、UFM1システムの機能低下が小頭症や精神運動発達遅延などを伴う遺伝性発達障害を引き起こすことを意味している。
研究グループはすでに、横浜市立大学大学院医学研究科の松本直道教授(遺伝学)らとの共同研究により、遺伝性発達障害患者を持つ日本の家系においてもUFM1システムを構成する遺伝子の変異を同定している。今後も国内外のUFM1システム関連遺伝子変異を持つ家系の検索、そしてUFM1システムの活性を増加させる薬剤のスクリーニングを行うことで臨床応用を目指すとしている。
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