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中心性漿液性網脈絡膜症に関わる2つの遺伝子変異を発見-京大

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2018年06月04日 PM12:45

中年の男性に多い中心性漿液性網脈絡膜症

京都大学は5月31日、約6千人の日本人データと2千人の韓国人データを解析し、脈絡膜の厚さや中心性漿液性網脈絡膜症の発症にCFHとVIPR2という2つの遺伝子が関与していることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の山城健児非常勤講師(大津赤十字病院眼科部長)らの研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「米国科学アカデミー紀要」にオンライン公開された。

中心性漿液性網脈絡膜症は中年の男性に多い病気。脈絡膜が厚くなり、網膜の中心部(黄斑)の裏側に水分が漏れ出てくるために、黄斑だけに網膜剥離が発症し、視界の中心部が見えにくくなる疾患である。同症は、治癒しても数十年後に加齢黄斑変性を発症しやすくなる。

加齢黄斑変性は先進国の主要な失明原因で、これまでドルーゼン(加齢とともに黄斑部に蓄積していく老廃物)が原因となって発症すると考えられてきた。しかし、最近では、ドルーゼンがなくても、脈絡膜が肥厚していることが原因となって、加齢黄斑変性と同様の病態を発症する場合があると考えられている。

また、日本人では中心性漿液性網脈絡膜症や脈絡膜の肥厚が原因で発症する特殊なタイプの加齢黄斑変性が多く、白人ではこのタイプの加齢黄斑変性が少ないため、中心性漿液性網脈絡膜症の発症メカニズムや脈絡膜が厚くなる原因を解明する研究が、日本人の加齢黄斑変性による失明を予防するためにも重要となると考えられている。

京大大学院医学研究科では滋賀県長浜市と共同で、「ながはま0次予防コホート事業」を行っている。今回の研究では、このコホートのデータを活用して、脈絡膜の厚さや中心性漿液性網脈絡膜症の発症に関わる遺伝子を探索。さらに、白人に多いタイプの加齢黄斑変性と日本人に多いタイプの加齢黄斑変性との根本的な違いに関わる遺伝子の発見を目指した。

CFH遺伝子とVIPR2遺伝子は脈絡膜の厚さを決定する因子

研究グループは、ながはまコホートの6,110人の網膜断層検査データとゲノム情報を活用して、ゲノムワイド関連解析を行った。その結果、CFH遺伝子とVIPR2遺伝子が脈絡膜の厚さを決定する因子であることを発見。さらに、同大医学部附属病院眼科および神戸大学らと中心性漿液性網脈絡膜症患者データ(701人)を用いて、CFH遺伝子とVIPR2遺伝子が中心性漿液性網脈絡膜症の発症に関わっていることを確認した。また、ソウル国立大学らと共同で、韓国人2,068人のデータではVIPR2遺伝子が中心性漿液性網脈絡膜症の発症に関わっていることを確認したという。


画像はリリースより

この研究成果によって、加齢黄斑変性を白人に多いドルーゼンを原因とした加齢黄斑変性(白人型加齢黄斑変性)と、日本人に多い中心性漿液性網脈絡膜症や脈絡膜の肥厚を原因とした特殊なタイプの加齢黄斑変性(日本人型加齢黄斑変性)の、2つに分けて考えることの重要性が明らかになった。CFH遺伝子はこのどちらのタイプの加齢黄斑変性になりやすいかを決めており、白人型加齢黄斑変性になりやすい型のCFH遺伝子を持っている人は、脈絡膜が薄くなるため中心性漿液性網脈絡膜症や日本人型加齢黄斑変性にはなりにくく、一方、白人型加齢黄斑変性になりにくい型のCFH遺伝子を持っている人は、脈絡膜が厚くなるため中心性漿液性網脈絡膜症や日本人型加齢黄斑変性になりやすいということが明らかとなった。

研究グループは「今までは日本人に多い特殊なタイプの加齢黄斑変性はあまり注目されていなかったが、このタイプの加齢黄斑変性の特徴が明らかになったことから、今後の加齢黄斑変性に対する治療が大幅に進歩していくのではないかと期待している」と述べている。

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